第69話:黒翼改、空中戦の幕開け
―魔導甲冑と雷剣、激突の空―
帝国領・上空三千メートル。
浮遊艦《黒翼改》の艦内、最深部の魔導室。
魔力炉の脈動が低く響く中、ヴェルドは静かに立っていた。
彼の身体には、漆黒の魔導甲冑が装着されていく。
肩、胸、腕、脚――すべてが魔力を通す導管で繋がれ、戦闘特化の構造を持つ。
「……始めるか」
ヴェルドは胸部の装甲を開き、そこに一つの魔力球をはめ込む。
それは――フィンから抽出された純魔力の結晶。
脈動するように光り、甲冑全体に魔力を供給する。
魔力が甲冑全体にみなぎり、彼の手に黒銀の剣が現れる。
その刃は、魔力の奔流を纏い、空気を裂くほどの圧を放っていた。
その時――
艦の甲板に、雷を纏った男が着地する。
「お前がヴェルドか」
カイルが剣を構え、雷を走らせる。
「フィンを返してもらう!」
ヴェルドが剣を振る。
カイルが雷を纏って突撃する。
激突――
雷と魔力がぶつかり合い、空間が軋む。
「速い……!」
ヴェルドが目を見開く。
「こっちも、死の淵で鍛えられてんだよ!」
カイルが剣を振り抜き、甲冑の肩を裂く。
だが、ヴェルドはすぐに再生魔法を発動し、反撃に転じる。
魔力の刃がカイルの足元を裂き、空中へと吹き飛ばす。
「くっ……!」
カイルは空中で体勢を立て直し、雷を集中させる。
「雷牙・双裂斬!」
二本の雷刃がヴェルドに向かって飛ぶ。
だが、ヴェルドは魔力の壁を展開し、受け止める。
「面白い。だが、まだ足りん」




