第68話:星喰いの伝承、封印の地へ
―風の加護、空を駆ける者たち―
「ルゥ、お願い。もう一度、力を貸して」
セレナがそっと手をかざし、共鳴の魔法を紡ぐ。
彼女の紋様が輝き、ルゥの身体に白金の光が走る。
次の瞬間、ルゥの身体がぐんと膨れ上がり、翼を広げて空を覆った。
「……大きくなった!」
ミーナが目を見張る。
「乗って!」
セレナの声に応じて、仲間たちが次々とルゥの背に飛び乗る。
風を切って舞い上がる白星竜。
その背に、セレナ、カイル、ミーナ、リィナの四人が並ぶ。
「リィナ、フィンの居場所は?」
セレナが問う。
リィナは目を閉じ、風の魔力を集中させる。
高位探索魔法――“風眼・千里視界”が発動する。
「……見えた。帝国領、上空三千――浮遊艦《黒翼改》」
リィナの声が震える。
「フィンの魔力を使って、艦を動かしてるわ!
あの子、魔導炉に繋がれてる!」
「……帝国が、フィンを……!」
セレナが拳を握りしめる。
その時、空中に魔力の閃光が走った。
黒い影がいくつも、こちらへ向かってくる。
「深層魔導兵……!」
ミーナが叫ぶ。
帝国の魔導機関を背負った兵たちが、空を飛翔しながら迫ってくる。
手には魔導銃、背には推進翼。
空中戦闘に特化した、帝国の精鋭部隊だった。
「来るよ! 全員、構えて!」
セレナが叫ぶ。
だがその時、リィナが風を集めて魔法陣を展開する。
「みんな、飛べるようにしてあげる。風精加護術――“翔風の契約”!」
魔法陣が三人の足元に広がり、風の紋様が身体に刻まれる。
次の瞬間、ミーナの背に炎の翼が、カイルの足元に風の踏み台が、セレナの背に白金の羽根が現れた。
「……これ、飛べる……!」
ミーナが驚きながら浮かび上がる。
「マジかよ!」
カイルが笑いながら跳ねる。
「でも、俺もそんな気がしてた! いくぜ!」
セレナはルゥと共に空を駆け、仲間たちもそれぞれの魔力で飛翔する。
「フィン、待ってて。今、助けに行くから――!」




