第67話:地上への帰還、そして新たな紋章
―魔核の贈りと、謎の男の言葉―
魔核の主が砕け散ったあと、洞窟の中心に――
ひときわ巨大な魔核が、脈打つように落ちていた。
「……あれが、魔核の主の本体……」
ミーナが息を呑む。
「すごい……魔力の密度が桁違い」
リィナが手をかざし、風を集める。
「風精転化陣・改式――“魔核分配陣”!」
彼女の足元に魔法陣が展開され、巨大な魔核が風に包まれて浮かび上がる。
魔力が粒子となり、四人と一体の身体へと均等に吸収されていく。
「……っ!」
セレナが膝をつきかける。
ミーナは炎を暴発させ、カイルは剣を地に突き立てて耐える。
「魔力が……急激に上がってる……!」
全員の身体が震え、紋様が淡く光を放つ。
ルゥの白金の鱗もさらに輝きを増し、空気が震えるほどの魔力を放っていた。
「これが……魔核の主の力……」
セレナが立ち上がり、剣を握り直す。
やがて、洞窟の奥に差し込む光が見えた。
地上への出口――希望の光。
四人と一体は、光の中へと歩みを進める。
だが――
出口の先に、ひとりの男が立っていた。
長身で、白銀の髪。
整った顔立ちに、冷たい微笑。
その存在だけで空気が張り詰める。
「……誰?」
ミーナが警戒する。
男は一歩も動かず、ただ静かに言った。
「竜の覚醒を感じてな。やはり、あの竜の子か……」
彼の視線は、ルゥとセレナに向けられていた。
「で――あなたが、竜の巫女。名前は……セレナか」
セレナは剣を構えたまま、男を見据える。
「あなたは……何者?」
男は微笑んだまま、背を向ける。
「また会おう。セレナ」
その姿は、風に溶けるように消えた。
「……今の、何だったの……?」
リィナが呆然と呟く。
セレナは手の甲の紋様を見つめながら、静かに言った。
「たぶん……これから始まる物語の、鍵」
そして、空を見上げる。
フィンの姿が脳裏に浮かぶ。
「一刻も早くフィンを助けにいくよ!
ザルグ――あなただけは、絶対に許さない」
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