第60話:魔核の主、進化の兆し
―喰らい、変わり、目覚める力―
死の淵・50階層。
魔物の咆哮が響き、仲間たちは次々と襲い来る魔物を斬り伏せていた。
倒した魔物のコアを拾い、食べる。
それを繰り返すたびに、彼らの身体と魔力に異変が現れ始めた。
ミーナの結界が、炎の膜から“灼熱の盾”へと変化する。
触れた魔物は焼かれ、跳ね返されるほどの攻撃性を帯びていた。
「……結界が、攻撃してる……」
ミーナが驚きながらも、炎を操る手に力を込める。
リィナの風魔法は、ただの風圧ではなく“刃の風”へと進化していた。
魔物の皮膚を裂き、骨を断つほどの鋭さを持ち始めている。
「風が……切ってる。これ、もう風じゃない」
リィナが呟く。
カイルの剣技は、軌道が変わっていた。
一撃で複数の魔物を斬り裂く“連閃”が、魔力の残像を伴って空間を断ち始める。
「……剣が、魔力を引いてる。これ、技じゃなくて術だな」
カイルが剣を構え直す。
そして、空竜ルゥの身体には、淡い光を放つ紋様が浮かび上がっていた。
それは古代竜の血統にのみ現れる“紋章進化”の兆し。
「ルゥ……その紋様、まさか……」
セレナが目を見開く。
そして、セレナ自身の魔力も変化していた。
仲間と魔力を重ねる“共鳴魔法”が、今までとは違う波動を放ち始める。
魔力が脈打ち、空間が震える。
共鳴魔法が、個の力ではなく“群の意志”として形を取り始めていた。
「これ……みんなの魔力が、私の中に流れ込んでる……!」
セレナの剣が光を帯び、空竜ルゥが咆哮する。
その時、洞窟の奥から異質な魔力が迫ってきた。
魔核の主――死の淵の支配者が、扉の向こうで目を覚ました。




