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第56話:怒りの共鳴、空を裂く一撃



―セレナの覚醒と、死の淵への覚悟―


空竜ルゥの背に乗り、セレナは空を駆けていた。

風精霊の流れを読み、魔力の歪みを辿る。

「ミーナ、リィナ、カイル……どこにいるの……!」


その時、空間が歪み、黒い霧が立ち上がった。

ルゥが咆哮を上げ、警戒の構えを取る。


霧の中から、黒衣の男が現れる。

――ヴェルド。


「探しても無駄だよ、セレナ」

彼は冷たい声で告げる。


「ミーナ、リィナ、カイル――三人とも、今頃死んでる。

死の淵の最深部に放り込まれた。

魔物の巣窟で、状態異常のまま――5分と持つまい」


セレナの瞳が揺れる。

「……フィンは?フィンはどこ!?」


ヴェルドは口元に冷笑を浮かべる。

「ザルグ様が魔力抽出中だ。

あの子の魔力は特別だからね。

使い捨てるには惜しいが、素材としては優秀だ」


セレナの魔力が爆発寸前まで高まり、空が震える。

だがヴェルドはさらに言葉を重ねた。


「死の淵に飛ばしたが最後――戻す術はない。

あそこは“閉ざされた地獄”。

誰も、二度と帰れない」


その言葉に、セレナの瞳が燃え上がった。


「……だったら、私を死の淵に飛ばして」

彼女の声は静かで、揺るぎなかった。


「ミーナも、リィナも、カイルも、フィンも――

仲間がそこにいるなら、私も行く。

地獄だろうが、焼き尽くして連れ戻す」


ヴェルドが目を見開く。

「正気か……!」


セレナが剣を構え、風精霊と空竜ルゥが共鳴する。

「共鳴魔法・最大出力――“蒼天裂波”!」


風と雷が剣に集束し、空が裂ける。

奔流がヴェルドを飲み込み、岩壁を抉る。


セレナは剣を構えたまま、静かに言った。

「飛ばせ。今すぐ。

私が、死の淵を越えてみせる」


風精霊が咆哮し、空竜が翼を広げた。

セレナの覚悟は、空を震わせていた。

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