第53話:死の淵の再会
―炎と風、そして血の剣―
死の淵。
腐敗した空気が肺を焼き、魔物の咆哮が空間を満たす。
ミーナとリィナは、魔物の群れに囲まれていた。
「もう、数が多すぎる……!」
ミーナが炎を放つが、魔物は次々と再生しながら迫ってくる。
「風精霊が乱されてる……術式が通らない!」
リィナが剣を振るうが、動きが鈍く、視界も霞んでいた。
状態異常魔法の影響が残る中、二人は背中合わせで必死に抵抗していた。
だが、魔物の輪が狭まり、牙が目前に迫る。
その瞬間――
「下がれッ!!」
血まみれの剣が魔物の首を跳ね飛ばした。
「カイル……!?」
リィナが叫ぶ。
そこに現れたのは、全身傷だらけのカイル。
血に染まった服、裂けた肩、焼け焦げた腕――
それでも、剣を握る手は震えていなかった。
「こっちだ……!」
カイルが魔物の群れを切り裂きながら、奥の岩壁へと走る。
三人は魔物の追撃を振り切り、洞穴へと滑り込む。
入口にミーナが炎の結界を張り、リィナが風で遮断を強化する。
洞穴の奥で、カイルが膝をつき、ついに倒れ込んだ。
「カイル!」
リィナが駆け寄り、すぐに治癒魔法を展開する。
「傷が深い……でも、まだ間に合う……!」
彼女の手から淡い緑の光が溢れ、カイルの身体を包み込む。
ミーナが背後を警戒しながら、静かに言った。
「よく……生きてたね」
カイルは苦笑しながら、かすれた声で答えた。
「死の淵ってのは……案外、しぶといやつの方が似合うらしい」
洞穴の奥で、三人は息を整えた。
だが、死の淵はまだ彼らを逃がす気はなかった。




