第52話:連鎖転移、死の淵へ
―カイル捜索と深層魔導兵の罠―
「カイルが……いない」
ミーナが飛行艇の残骸を見下ろしながら呟いた。
リィナが風精霊に問いかけるが、返ってくるのは沈黙。
「風が……彼の気配を見失ってる。何かがおかしい」
セレナは魔導監視台から報告を受け、すぐにルゥとともに空へ舞い上がった。
「ルゥ、空から探すよ。カイルは絶対にどこかにいる」
ミーナとリィナは丘陵地帯を歩きながら、地上から捜索を開始する。
「私たちは陸から。風と炎で痕跡を探す」
「うん、何か見つけたらすぐ連絡する」
だが、二人が森の縁に差し掛かった瞬間――
地面に魔法陣が浮かび上がった。
「っ……魔力反応、急激に上昇!」
ミーナが叫ぶ。
「これ、深層魔導兵の術式……!」
リィナが剣を抜こうとしたが、遅かった。
魔法陣が発動し、状態異常魔法が一斉に展開される。
- 足が重くなり、動きが鈍る
- 視界が揺れ、目が霞む
- 魔力が痺れ、身体が硬直する
「くっ……動けない……!」
ミーナが膝をつく。
「風精霊が……遮断されてる……!」
リィナが魔力を集中させようとするが、術式が乱されている。
その瞬間、空間が歪み、転移陣が展開された。
黒い渦が二人を包み込む。
「まさか……カイルと同じ罠……!」
ミーナが叫ぶ。
「セレナ……!」
リィナの声が空に届くことはなかった。
二人の姿は、転移の光に飲まれ、消えた。
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次の瞬間、ミーナとリィナは死の淵の最深部に立っていた。
腐敗した空気、魔物の咆哮、そして絶え間ない魔力の干渉。
そこは、生者の踏み入るべき場所ではなかった。
「ここが……死の淵……」
ミーナが震える声で言う。
「でも、私たちは……炎と風で、切り拓く」
リィナが剣を構える。
魔物たちが牙を剥き、二人に迫る。
その中で、風と炎が交差する。




