第47話:空竜の咆哮、蒼空の決戦
―潜伏艦〈黒翼〉、魔竜の出撃―
午前6時。帝国残党艦〈黒翼〉、洋上。
甲板では深層魔導兵たちが魔導砲へ魔力を注入していた。
砲身が赤黒く輝き、禁忌の紋章が浮かび上がる。
ヴェルドが指揮台に立ち、上空を見上げる。
そこには、フィンの操る魔導飛行艇〈ウィンドレイヴ〉が旋回していた。
「撃て」
ヴェルドの命令と同時に、魔導砲が咆哮を上げる。
赤黒い魔力弾が空を裂き、飛行艇へと迫る。
フィンが操縦席で叫ぶ。
「何事だ!この魔力……帝国の残党か!?」
飛行艇の魔法障壁が展開され、初弾を辛うじて回避。
だが、ヴェルドは容赦なく叫ぶ。
「連続で撃て!魔力を惜しむな!」
次弾、三弾――魔導砲が連続発射され、空を焼く。
飛行艇の障壁にヒビが入り、ついに一発が貫通。
「ぐっ……!」
フィンが操縦桿を握りしめるが、機体は大きく揺れ、制御不能に陥る。
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その瞬間、艦の甲板から漆黒の影が飛び立った。
魔竜ザルグ――人魔融合体。
六枚の翼を広げ、空を裂くように飛翔。
飛行艇へ一直線に突撃し、爪で船体を引き裂く。
「空竜の残党め……貴様らの空など、焼き尽くしてやる!」
フィンが魔導制御を試みるが、ザルグの咆哮が魔力干渉を起こし、術式が崩壊。
飛行艇はめちゃくちゃにされ、甲板が爆裂する。
フィンが吹き飛ばされる――その瞬間、ザルグの爪が彼を捕らえた。
「逃がさん……風精霊の使いよ。貴様の知識、我が魔核に刻んでやる」
フィンは苦悶の表情を浮かべながらも、静かに呟いた。
「セレナ……空が、また……」
ザルグの翼が広がり、フィンを抱えたまま、夜明けの空へと消えていく。




