第38話:逆襲の空、奪還の刃
帝国施設上空。
魔導飛行艇〈ウィンドレイヴ〉は、術式障壁の外縁を旋回していた。
風精霊の導きにより、封印の裂け目が徐々に広がっていく。
「第一層、崩壊まであと十秒」
フィンが操縦席から声を上げる。
「砲撃、同期完了!」
ミーナが右舷の魔導砲に魔力を注ぎ込む。
「風、流れた。いける!」
リィナが左舷の砲座で風精霊と共鳴する。
カイルは船首に立ち、剣を抜いた。
「突撃開始。俺が道を開く!」
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魔導砲が一斉に発射され、術式障壁が砕け散る。
カイルが飛び降り、敵陣を切り裂きながら施設内部へと突入。
ミーナとリィナが砲撃支援を続け、空間の歪みを押し広げる。
セレナとルゥが急降下。
ドラゴンメイルが敵の魔力を弾き、ルゥの咆哮が術式の中心を震わせる。
「蒼空の共鳴――展開!」
セレナが詠唱を重ねると、ルゥの翼が光を放ち、巨大な魔力の刃が施設を貫く。
術式の核が露出し、封印の柱が崩れ始める。
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その中心に囚われていたエリシア。
魔力の鎖に縛られ、意識は深く沈んでいた。
「セレナ様……」
微かに響く声が、風に乗って届く。
その瞬間、ザルグが姿を現す。
「王女は我らの盾。空竜の力を封じる鍵だ。渡すわけにはいかん」
セレナが前に出る。
「彼女は誰かの盾じゃない。誇りを持って立つ者よ」
ザルグが魔力を放ち、空間が歪む。
だが、飛行艇の砲撃とフィンの魔法がそれを打ち消す。
カイルが突撃し、ミーナとリィナが術式支柱を破壊。
フィンが風精霊を術式の核に送り込み、封印が崩壊する。
セレナがエリシアを抱きしめる。
「もう大丈夫。あなたは、戻ってきた」
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だが、施設の崩壊が始まっていた。
術式の暴走により、空間が裂けていく。
「急げ!脱出するぞ!」
カイルが叫び、ルゥが咆哮を上げる。
フィンが飛行艇を旋回させ、脱出ルートを開く。
ミーナとリィナが魔導砲で空間の裂け目を広げる。
セレナたちはルゥの背に乗り、飛行艇とともに脱出した。
そして、空は――再び祝福の光を取り戻し始めていた。




