第37話:空の下の誓い、再び
魔導飛行艇〈ウィンドレイヴ〉は、夜明け前の空を静かに進んでいた。
目的地は帝国の山岳地帯に隠された封印施設。
そこには、王女エリシアが人質として囚われていた。
操縦席ではフィンが風精霊と交信しながら、術式の構造を解析していた。
「封印は三層構造。中心にエリシアがいる。術式の核は動いてる。ザルグが直接制御してるみたいだね」
船内では、仲間たちがそれぞれの持ち場に立っていた。
- カイルは船首に立ち、突撃の指揮を取る。
- ミーナは右舷の魔導砲に魔力を注ぎ込み、術式障壁の破壊を担う。
- リィナは左舷の砲座で風の流れを操り、結界の乱れを誘発する。
- セレナはルゥの背に乗り、魔力の共鳴を整えていた。
「彼女を取り戻す。空も、絆も、もう奪わせない」
セレナの声に、ルゥが低く咆哮で応える。
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突入開始。
ミーナの魔導砲が第一結界を粉砕。
リィナの風砲が空間の歪みを切り裂く。
フィンが術式の裂け目に風精霊を送り込み、内部構造を露出させる。
「今だ、セレナ!」
フィンが叫ぶ。
セレナとルゥが急降下。
ドラゴンメイルが敵の魔力を弾き、ルゥの咆哮が空間を震わせる。
施設の中心部――
そこには、魔力の柱に囚われたエリシアの姿があった。
「セレナ様……」
微かに響く声。
だが、術式が彼女の意識を封じ、動くこともできない。
「蒼空の共鳴――展開!」
セレナが詠唱を重ねると、ルゥの翼が光を放ち、巨大な魔力の刃が降り注ぐ。
術式が揺らぎ、封印の裂け目が生まれる。
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その時、ザルグが姿を現す。
「王女は我らの盾。空竜の力を封じる鍵だ。渡すわけにはいかん」
セレナが前に出る。
「彼女は誰かの盾じゃない。誇りを持って立つ者よ」
ザルグが魔力を放ち、空間が歪む。
だが、飛行艇の砲撃とフィンの魔法がそれを打ち消す。
カイルが突撃し、ミーナとリィナが魔導砲で術式の支柱を破壊。
フィンが風精霊を術式の核に送り込み、封印が崩壊する。
セレナがエリシアを抱きしめる。
「もう大丈夫。あなたは、戻ってきた」
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だが、施設の崩壊が始まっていた。
術式の暴走により、空間が裂けていく。
「急げ!脱出するぞ!」
カイルが叫び、ルゥが咆哮を上げる。
フィンが飛行艇を旋回させ、脱出ルートを開く。
ミーナとリィナが魔導砲で空間の裂け目を広げる。
セレナたちはルゥの背に乗り、飛行艇とともに脱出した。
そして、空は――再び祝福の光を取り戻し始めていた。




