第34話:決断の空
王宮の空は、沈黙していた。
エリシア誘拐の報せは瞬く間に広まり、祝福の準備は凍りついた。
人々の間に広がる不安と怒りは、風のように街を包んでいた。
セレナは塔の上で、手紙を握りしめていた。
「私が行く。彼女を取り戻すために、私が差し出される」
ルゥが低く鳴き、レオニスがすぐに彼女の手を取った。
「君を渡すなんて、絶対にしない。僕たちで取り戻す」
その言葉に応えるように、カイルが剣を腰に収めながら現れた。
「敵の拠点は特定できた。北方の山岳地帯、魔力兵器の旧施設だ」
ミーナが魔導書を開きながら言う。
「転移術式の痕跡が残ってた。座標を解析すれば、侵入ルートは見つかる」
リィナは風を読みながら、静かに呟いた。
「風が乱れてる。でも、私たちの流れは揃ってる。行ける」
セレナは仲間たちを見渡し、深く息を吸った。
「ありがとう。私は一人じゃない。なら、誇りを持って戦える」
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魔導士協会の協力により、帝国の拠点が明らかになった。
北方の山岳地帯――かつて魔力兵器の研究が行われていた廃施設。
現在は帝国の秘密拠点として再稼働しているという。
ルゥの背に乗るセレナとレオニス。
その後を、カイル、ミーナ、リィナが続く。
「風の流れ、安定。魔力の共鳴域、確保」
リィナが空の道を開く。
「魔導陣、強化完了。術式の干渉を遮断できる」
ミーナが魔力を注ぎ込む。
「剣の軌道、共鳴に合わせて調整済み」
カイルが剣を構え、術式に合わせて動きを確認する。
「ルゥの魔力も安定してる。暴走の兆候はない」
セレナが竜の背を撫でながら言った。
レオニスは王の装束を脱ぎ、戦士の鎧を纏った。
「王としてではなく、一人の戦う者として。
この空を、守るために」
そして、彼らは空を翔けた。
奪われた姫を取り戻すために。
誓いと絆を胸に、帝国の牙城へ向かって。




