第23話「魔道士の称号」
序章:春の招待
王都の社交界は、春の舞踏会を控えていた。
かつて私が婚約破棄された、あの夜と同じ季節。
けれど、今の私は、あの頃とは違う。
「セレナ嬢、舞踏会にご出席を」
王都から正式な招待状が届いた。
魔導士協会による魔力認定と、法廷での無罪判決を受けて、私は“空翔ける魔導士”として王都に再び迎えられた。
「行くの?」
ミーナが尋ねる。
「ええ。過去と向き合うために」
私は静かに答えた。
ルゥが翼を広げ、空へ舞い上がる。
私たちは、再び王都へ向かった。
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第一章:再び、社交界へ
舞踏会の会場は、かつてと同じ王宮の大広間。
百花が咲き誇り、貴族たちが笑顔の仮面をかぶって集っていた。
私は、空翔ける者として、堂々とその場に足を踏み入れた。
ドレスは、辺境の職人が仕立てたもの。
魔力を織り込んだ布が、静かに光を放っていた。
「まあ、セレナ様。よく戻ってこられましたわね」
リディアが、笑顔で近づいてきた。
その声には、まだ余裕があった。
「あなたの魔法、法廷では認められたようだけれど。
社交界では、そう簡単にいかないわよ」
私は微笑んだ。
「そうね。だから、証明するわ。
この場で、私が“何者”なのかを」
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第二章:魔道士の称号とリディアの敗北
舞踏会の中盤、魔導士協会の代表が壇上に立った。
「本日、特別な発表があります。
新たに“空翔ける魔導士”として認定された者――
セレナ・グランディール嬢です」
会場がざわめいた。
魔導士としての認定は、貴族の地位を超える名誉。
それは、力と人格の両方を認められた者にのみ与えられる称号。
「彼女の魔法は、古代の記録に基づく共鳴魔法。
絆を媒介とし、守る力を持つ。
そして、彼女はそれを実践で証明しました」
リディアの顔が、青ざめていく。
「……あの女が私より格上ですって…」
周囲の貴族たちが、彼女から距離を取り始める。
「リディア様、告発は誤りだったのでは?」「セレナ嬢の方が、よほど王妃にふさわしいのでは?」
私は、静かに壇上に立った。
「私は、かつてこの場で婚約を破棄されました。
魔力がないと、価値がないと言われました。
でも、今の私は、誰かに選ばれるためにここにいるのではありません。
私は、自分の意思でここに立っています」
拍手が広がった。
それは、祝福ではなく――称賛だった。
リディアは、何も言えずにその場を去った。
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第三章:誇りの舞
音楽が流れ始めた。
私は、ルゥの背に乗って空へ舞い上がった。
舞踏会の天井が開き、夜空が広がる。
「空翔ける者の舞を」
魔導士協会の声が響く。
私は、空の中で魔力を展開し、光の輪を描いた。
それは、絆の魔法。
ルゥと私の力が共鳴し、夜空に花を咲かせる。
人々は、息を呑んでその光景を見つめていた。
私は、誰かの飾りではない。
誰かの都合で生きる存在でもない。
私は、空を翔ける者。
そして、誇りを持って生きる者。
風が吹いた。
それは、誇りを讃える風だった。
そしてその風の向こうで――
私は、未来を見つめていた。
この空の下で、誰かを守る者として。
そして、私自身の物語を紡ぐ者として。




