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第21話 「冷静なる反撃」



知識の塔は、都市の北端にそびえていた。

魔力で浮かぶ書架、記憶を記した水晶、そして封印された古文書。


私たちは、協会の許可を得て、塔の最深部へと向かった。

リィナは風を操り、古文書の封印を解く補助をしてくれた。


そこに記されていたのは――


《共鳴魔法:古代の守護竜と巫女が交わした契約により生まれた魔法。

絆を媒介とし、魔力を増幅・安定させる術式。

その使用者は、選ばれし者とされる》


私は、その記録を手に、魔導士協会へと向かった。

けれど、協会の扉の前で、思いがけない人物が待っていた。


「セレナ嬢。お会いできて嬉しいです」

レオニス・アルベルト殿下。

王太子の弟であり、王宮の魔術院に籍を置く青年。

かつて私に敬意を向けてくれた、ただ一人の王族。


「リディア嬢が、あなたを陥れようとしていることは、王都でも問題になり始めています。

僕は、彼女の魔術記録と告発文の矛盾を調べてきました。

協会長に提出する準備はできています」


私は、彼の瞳を見つめた。

そこには、打算も命令もなかった。

ただ、誠実な意志だけがあった。


「ありがとう、殿下。あなたがいてくれて、心強いです」


---


協会長は記録を読み、そしてレオニスが提出した証拠と照らし合わせた。

静かに頷き、言った。


「……この魔法は、確かに正統なものだ。

告発は、根拠のない中傷と判断する」


リディアの陰謀は、崩れ去った。


私は、ルゥの背に手を添えながら、静かに一礼した。

「この力は、誰かを傷つけるためのものではありません。

絆の中で生まれた、誇りの証です」


レオニスは、少しだけ微笑んだ。

「その言葉に、僕は何度でも力を貸したくなります」


---



その夜、私はルゥと共に丘に登った。

都市の灯が遠くに揺れ、空には星が瞬いていた。


「私は、もう誰かに否定される存在じゃない。

この力は、絆の証。

そして、私自身の誇り」


ルゥが翼を広げ、空へ舞い上がる。

私は彼の背に乗り、夜空を翔けた。


下では、ミーナが焚き火を見つめ、カイルが剣を研ぎ、リィナが風に耳を澄ませていた。

それぞれが、自分の過去と向き合いながら、今を生きている。

その姿が、私の背を押してくれる。


風が吹いた。

それは、誇りを運ぶ風だった。


そしてその風の向こうで――

誰かが静かに見守っている気がした。

私を“飾り”ではなく、“意思を持つ者”として見てくれた、ただ一人の王族。


レオニス殿下のまなざしは、今も空の先に届いていた。

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