第73話:領主よりも急ぎの用
宿屋から勢いよく出てきた三人。
クラリッサは拳を握りしめて宣言する。
「よし! 気合入れていくわよ!」
「おう〜!」アメリアも元気いっぱい。
だが――
宿屋の前にはギルバートと、見慣れない紳士が立っていた。
ギルバートが慌てて紹介する。
「こちらは領主 ヴァルター様 の執事、アインザック様です。
領主様が直々に御三方に会って下さるそうです!」
アメリアは一瞬だけ固まり、
すぐにそっぽを向いた。
「……あ、そうなんだ……
でも今から出ちゃうからさ……また今度で」
執事アインザックが咳払いする。
「コホン……私は領主ヴァルター様の執事、アインザック。
領主様が直々に会って下さるとの事で……」
アメリアは手を振る。
「……うん、さっき聞いた。じゃまた……」
「待って下さい! 領主様なんです!!」
クラリッサが眉をひそめる。
「だからそんな暇ないっつ〜の!」
アメリアも続く。
「誰だよ領主って。知らんし!」
アインザックは絶句した。
「えっ……え〜……普通、会うものですよ……!」
アメリアは腕を組む。
「急いでんだよこっちは!」
ギルバートはついに――
土下座した。
「おねがいします!!
金……金払いますから!!
私の顔に免じて!!」
バックスは額を押さえ、ため息をつく。
「どうするよ……話だけでも聞いてやるか……?」
アメリアとクラリッサは顔を見合わせ、
同時に肩を落とした。
「……しょうがねぇなぁ」
こうして三人は、
予定外の“領主面会イベント”へと向かうことになった。




