第62話:血海の囮
バックスは地面を蹴り、ビショップの方へ一直線に走り出した。
走りながら両手を大きく広げ、低く呟く。
「《血界・クリムゾンタイド》!」
瞬間、地面から赤い魔力が噴き上がり、
周囲一帯が血の海のような魔力領域に変わった。
その中にいたゴブリンたちは、
悲鳴を上げる間もなく魔素へと分解されていく。
ビショップが驚愕の声を上げた。
「……! バンパイア……!」
バックスはさらに指を弾き、次の魔法を放つ。
「《血槍術・ブラッドスパイク》!」
赤い鉄杭のような魔力が一直線に飛び、
ビショップの肩口をかすめて弾き飛ばす。
ビショップは怒りに震えた声を上げた。
「……貴様ぁぁぁぁ!!」
美しい顔の一部が削れ、
その怒気は一瞬で殺気へと変わる。
バックスは背中から血の羽を展開し、
ふわりと空へ舞い上がった。
ビショップは竜騎兵を呼び出し、
「……てめぇは逃がさない!!」
と叫びながらバックスを追うように飛び立つ。
二人の姿は森の奥空へと消えていった。
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アメリアはその背中を見送りながら呟く。
「……行ったね」
クラリッサも深く息を吐く。
「行ったな……」
二人は茂みから姿を現し、
目の前に広がるゴブリンの群れを見据えた。
アメリアは拳を握りしめる。
「……クラリッサ。エルミナの恨み……
こいつらには関係ないかもしれないけど……
蹂躙するよ。全部倒す。」
クラリッサはにやりと笑った。
「……だよね〜」
二人は前へ踏み出した。
ここからが、彼女たちの戦いだ。




