第60話:森に築かれた“城”
草陰からそっと顔を出したバックスが、思わず声を漏らした。
「……なんだあれ!」
アメリアとクラリッサも身をかがめ、同じ方向を覗き込む。
「……あれって……」
「……城!」
そこには――
ゴブリンたちが木材を組み上げて作った、簡易とはいえ“城”と呼べる巨大な構造物 がそびえていた。
見張り台、柵、壁、門……
明らかに“群れ”のレベルを超えた組織力だった。
バックスは眉をひそめる。
「……ゴブリンにこんな知能は無いんだが……」
クラリッサが指をさす。
「あそこ見て!」
視線の先――
一際巨大なゴブリンが二体。
その近くには、
木の上から全体を見下ろすように立つ、
女性らしき人影 がいた。
バックスの表情が険しくなる。
「……あれは……魔族だ。ネームド……多分だが……ビショップ」
アメリアが小声で聞く。
「ビショップ……?」
「ああ。モンスター使いの魔族だ。
キングゴブリンを生み出して眷属にしたんだろう……
……マズイな」
アメリアが眉を寄せる。
「……何がマズイのよ」
クラリッサが答える。
「城を作るってことは……ここを拠点にするってことよ」
バックスが重く頷いた。
「……おおかたそんなところだ。
魔族の領域を広げるのが目的なのか……
なんにせよ――街が危ない」
グレイフォレストの奥で、
ゴブリンたちの咆哮が響いた。
三人は息を呑み、
これから始まる戦いの重さを理解した。




