第56話:道なき道と、たくましい姫
アメリアは胸元の赤い首飾りにそっと手を当てた。
宝石が微かに脈打つように光り、細い光線が森の奥を指し示す。
バックスがその方向を見て唸る。
「……あっちだな。だが道が無いな……」
クラリッサが肩をすくめる。
「バックスさん、地図が出せる血魔法とか……ないんですか」
バックスは即答した。
「あるわけ無いだろ、そんな便利なもん……
……だが、地図はいるな」
アメリアが周囲を見回しながら言う。
「近くに町とか無いのかな」
バックスは少し考え、頷いた。
「……あるにはある。方向的にも近い……行くか」
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■ 川辺の夕暮れ
しばらく歩くと、森が開け、川辺に出た。
空は赤く染まり、すぐに暗くなり始める。
バックスが空を見上げて言った。
「今日はここで野営するか」
アメリアは元気よく手を挙げる。
「私、魚取るね!」
バックスは呆れたように眉を上げた。
「……て、釣竿も無しにどうやって……」
アメリアは返事もせず川へ入る。
そして――
川底へ拳を叩きつけた。
バコォォォン!!
水柱が上がり、衝撃で川が揺れ、
大量の魚がひっくり返って浮かび上がった。
クラリッサはすぐに魔法を展開し、
浮かんだ魚をふわりと持ち上げて岸へ運ぶ。
バックスはその光景を見て、
思わず苦笑した。
「……たくましいお姫さんだな……」
アメリアは照れくさそうに笑いながら、
魚を拾い集めていた。




