第15話「ミーナ」
灰の峠を越えたセレナ、リィナ、カイル、そしてルゥは、深界へ向かう道を進んでいた。
風は冷たく、空気には魔力の濁りが漂っている。
リィナが立ち止まり、風の精霊に耳を澄ませる。
「……こっちに氷がいる」
セレナが振り返る。
「氷?誰かがいるの?」
「風が言ってる。冷たい力が、閉じ込められてる。助けを求めてる」
リィナの声は確信に満ちていた。
カイルが剣を握り直す。
「行ってみよう。魔物じゃなければ、仲間かもしれない」
一行は風の導きに従い、岩場の奥へと進んだ。
やがて、古びた廃屋のような場所にたどり着く。そこには、盗賊たちが集まっていた。
「動くな!」
カイルが飛び出し、炎の剣を振るう。盗賊たちは驚き、武器を構える。
セレナは竜の力で結界を張り、リィナは風の刃で敵の動きを封じる。
戦いの最中、奥の牢に閉じ込められていた少女が目を見開いた。
銀髪に冷たい瞳――氷の魔力を纏った彼女は、ミーナだった。
「助けに来たよ!」
セレナが叫び、ルゥが牢を破壊する。
ミーナはふらつきながらも立ち上がり、手をかざす。
「氷結――《凍鎖》!」
氷の鎖が盗賊たちを絡め取り、動きを封じる。
カイルが剣でとどめを刺し、戦いは終わった。
ミーナは息を整えながら言った。
「ありがとう……誰か来てくれるって、信じてた」
リィナは微笑みながら頷いた。
「風が、あなたを呼んでた」
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盗賊を退けた一行は、廃屋の外で焚き火を囲んでいた。
ミーナは氷の魔力を調整しながら、静かに語り始める。
「私は魔力の流れを調べてた。結界の歪みが深界から広がってるの。
それを追ってたら、盗賊に捕まって……」
セレナは頷く。
「私たちも、結界の核を探してる。世界の揺らぎを止めるために」
カイルは剣を研ぎながら言った。
「なら、目的は同じだな。これで四人。力も揃ってきた」
リィナは風を操りながら、空を見上げる。
「風、炎、氷、竜、そして巫女。これなら、深界の門を越えられる」
ミーナは静かに立ち上がり、氷の結界を展開する。
「私も行く。この世界を守るために」
その時、空気が震えた。
遠くから、黒い魔力の波が押し寄せてくる。
セレナはルゥに乗り、前を見据える。
「行こう。深界が、私たちを待ってる」
こうして、四人と一匹の旅は再び動き出した。
それぞれの力が交差し、運命の扉が静かに開かれようとしていた。




