第41話:セレナと魔王、再び
エルミナ城の最上部。
吹き飛んだ屋根から朝の光が差し込み、瓦礫の中で二つの影が向かい合っていた。
魔王ザルグ。
そして、大母后セレナ。
二人の間に流れる空気は、かつての友情と深い憎悪が入り混じった、重く冷たいものだった。
---
セレナが静かに口を開く。
「……竜。あの子はルゥよ……」
ザルグは目を細め、鼻で笑った。
「そんな名前だったか……」
セレナは遠くを見るように言葉を続ける。
「……20年前に旅に出た……」
ザルグは顎に手を当て、興味なさげに呟く。
「……では不在というわけか……」
セレナは沈黙した。
その沈黙が、すべてを物語っていた。
ザルグはゆっくりと歩み寄り、冷たい声で告げる。
「老いた竜の姫……いや、竜がいないから……ただの老いた姫か」
セレナの瞳が鋭く光る。
ザルグは笑みを深めた。
「積年の恨み……晴らさせてもらうぞ、セレナ」
「ザルグ!!」
---
セレナがローブを払うように脱ぎ捨てた瞬間――
ザルグはその動きを見て、ふっと口角を上げた。
そして次の瞬間、腹の底から響くような大笑いが城にこだました。
「ハァーハッハッハッハッ!!
老いた体で……今さら何をするつもりだ、セレナ!!
この俺に……魔王ザルグに……!」
瓦礫が震え、空気が揺れるほどの嘲笑。
セレナの白髪が風に揺れ、彼女はその笑いを真正面から受け止めていた。
だが――
その瞳は揺らがない。
---
セレナの胸元には、巨大な赤い宝石が脈動していた。
ザルグの笑いが止まる。
「……!」
セレナは宝石に手を添え、静かに、しかし確固たる声で呟く。
「共鳴……」
宝石が一瞬で眩い光を放ち、城全体が震えた。
魔力が空気を裂き、セレナの白髪が風に舞う。
ザルグの表情がわずかに変わる。
「……ほう?」
セレナは叫んだ。
「最大出力――
《紅蓮共鳴・クリムゾン・レゾナンス》!!」
轟音とともに、赤い奔流がザルグへ向かって放たれた。
空間が歪み、石畳が砕け、光が一直線に魔王を貫く。
ザルグの姿が光に飲み込まれ、爆風が城を揺らした。




