第33話:魔王、降臨
エルミナへ向かう街道。
アーサー率いる橘騎馬隊が夜道を急いでいたその時――
ドォンッ!!
大地が揺れ、馬たちが悲鳴を上げる。
アーサーは咄嗟に手綱を引き、振り返った。
そこに立っていたのは――
黒竜バルキリーから飛び降りた魔王ザルグ。
月明かりを背に、金髪が揺れ、闇の中でその瞳だけが妖しく光る。
アーサーたちは一瞬で血の気が引いた。
「な、なんだ……あいつは……!」
「動くな! 構えろ!」
騎馬隊が狼狽しながら武器を構えるが、ザルグはただ不敵に笑った。
「ふ……無駄だ」
ザルグがゆっくりと手をかざす。
バチィッ!
見えない力が空気を裂き、騎馬隊全員の体を一瞬で縛りつけた。
アーサーもロトも、馬すらも動けなくなる。
「ぐっ……体が……!」
「な、なんだこれは……!」
ザルグはゆっくりとロトの方へ歩み寄る。
ロトは必死に抗おうとするが、指一本動かせない。
ザルグはロトの背に眠るアメリアの顔を覗き込んだ。
その表情は、懐かしさと狂気が入り混じったようなものだった。
「……セレナそっくりだな」
その声は優しさすら感じさせるが、底には深い執念が潜んでいた。
アーサーは歯を食いしばり、叫びたくても声が出ない。
ロトは涙を浮かべながら、ただアメリアを守ろうと必死に睨みつける。
ザルグは微笑んだ。
「やはり……間違いない。セレナの血だ」
夜風が吹き抜け、戦慄が街道を包んだ。




