表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/85

第10話:封じられた空



王城の回廊は、朝の霧に沈んでいた。

レオニスは壁の陰に身を潜め、兄アルベルトの執務室の扉越しに耳を澄ませていた。

中から聞こえてくるのは、アルベルトとグレゴールの会話。


「娘は幽閉した。竜と引き離しておけば、力は封じられる」

グレゴールの声は冷たく、確信に満ちていた。


「よくやった」

アルベルトは短く答えた。

「巫女の力は王家のものになる。

セレナが従わぬなら、力だけを抽出すればいい。

感情など不要だ。必要なのは、支配できる器だ」


レオニスは拳を握りしめた。

兄の言葉は、かつての王家の理想とはかけ離れていた。

そして何より――セレナを“器”と呼ぶその冷酷さが、彼の心を突き刺した。


「……もう黙ってはいられない」


彼はすぐに王都の魔道士団へ向かい、信頼できる近衛魔道士20名を招集した。

その足で、グランディール家へと向かう。


---


王都の空は、重く沈んでいた。

グランディール家の屋敷は、まるで城塞のように静まり返り、外部との気配を遮断していた。


その門前に、魔道士たちが整列していた。

レオニスの瞳は鋭く屋敷を見据えていた。


「この屋敷に、セレナ・グランディールが不当に幽閉されている。

魔力障壁の解除と、館内の捜索を開始する」


魔道士たちは一斉に詠唱を始め、屋敷を包む結界に干渉を加えた。

空気が震え、門が軋み、魔力の膜が裂けていく。


屋敷の使用人たちは混乱し、衛兵たちは動揺した。

だが、レオニスの命令に従い、魔道士たちは迷いなく進んだ。


まず向かったのは、竜ルゥが閉じ込められている“特別室”。

厚い魔力障壁が張られていたが、魔道士団の連携によって解除が成功。


ルゥはすぐに飛び出し、鳴き声を上げながら館の奥へと翔けた。

彼が向かった先――それは、セレナの部屋だった。


「次はセレナ嬢の部屋だ。急げ」


魔道士たちは再び詠唱を始め、セレナの部屋の封印を解除。

扉が開いた瞬間、ルゥが飛び込み、セレナが目を見開いた。


「レオニス……!」


彼女の声に、レオニスは静かに頷いた。

「もう大丈夫。君を迎えに来た」


セレナはルゥを抱きしめ、立ち上がった。

その瞳には、恐れではなく、確かな意志が宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ