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サンババサバイバル  作者: 夢丸力丸


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1/11

1一新更始・・・庭付き一戸建て700万

サンババとの出会いは東京近郊の海沿いの傾斜地にある別荘と住宅地の境

私が初めて彼女たちに会ったのは老後のための庭付き平屋を探していた時だった。

「ここが今日3軒目の物件です」。

かえで不動産の若道さんに促され車を降りたのはとある別荘地の一角だった。

「ここの通りを挟んでこちら側が別荘地こちらが普通の住宅地です」

「別荘と言っても普通の住宅地と変わりないですね、もっと軽井沢のような感じかと思ったら、

杉並の住宅地みたいで普通ですよね」

「そうですね、築20年30年ですから、当時は別荘ブームでたくさん建てたからだと思います」

「なるほど」

「物件はここです」と案内されたのは3軒が向かい合った袋小路の一番奥だった

「別荘地ではないんですね」

「ええ、以前は別荘地だったのですが管理会社が倒産して、今は自主管理の住宅地になっています。

売主は別荘として使っていたようです。住んでいませんが、頻繁に来ていたのでそんなに荒れてはいません、庭で家庭菜園もしてらっしゃったので、まだ名残がありますよ」

「自主管理って問題ないんですか?」

「ええ、心配はいりません、電気もガスもゴミ収集も一般の住宅地と同じですから」

「ここいいですね、今日見た物件の中では平らで、日当たりもよさそうですね」

今まで約一年、あちこち探して目利きになっていたこともあり、ここの第一印象はとてもよかった。ひと通り外回りを見て、中をみて、ここに決めようと思った。

決め手は平屋だったことと庭で家庭菜園ができること。斜面に家が建っている物件が多いなか平坦な土地にあるこの物件は貴重だった。


車に戻ると、近くから「若道さ~ん」と声がかかった。

はす向かいの庭にガゼボがあって3人のシニア女性がお茶を飲んでいた。境に柵はなかった。

「どうも、お久しぶりです」

「吉崎さん売りに出されたのね」

「ええ、新しい方が来たらよろしくお願いしますね」

というような会話をして運転席に戻ってきた。


車を発進してから「あの方たちは?」と聞くと

「皆さん以前私がお世話した方たちで、とても良い方ばかりですよ」と言った

「別荘の方ですか」「おひとりは別荘であとのお二方は住宅です、お隣の方たちです」

「そういえば上品そうな感じでしたね」」

「ええ、金持ち喧嘩せずというか、おひとりでも老後を楽しんでいますね」

「皆さん一人暮らし?」

「ええ今は、みなさまおひとりです」

近所の雰囲気もよさそうで安心した。

毎日ネットで検索する日々もそろそろ終わりにしたかったし、ここを見た瞬間に家庭菜園をしているイメージが浮かんだので物件と相性がいいと思った。特に問題はないようで夫も同意見だった。

価格は東京の10分の1くらいなので貧乏人の私たちにも手が届いた。

今のマンションが500万で売れたらこの庭付き一軒家は700万円で手に入ることになる。

坪数は30なので充分だし、何より家庭菜園で使っていたので土も入っている。

今まで見た物件でかつて別荘だったところは、庭は庭園として大きな石や木があって畑はむりだった。(そうだよね30年前の別荘族はお金持ちなんだから家庭菜園なんかしないもんね)


2週間後、契約引っ越しが終わり、まずはご近所の挨拶にと思ったら、その日も3人のマダムたちがガゼボに集まっていた。(ヒマなんかい?)

このガゼボ、どこかのガーデン雑誌で見たことがある。輸入品のようで真ん中に丸テーブルがありその周りに4~5人が座れる屋根付き5角形の東屋なのだが、庭にはバラが植えてあり、花時ならばさぞや華やかだろうと思わせた。芝生の手入れも行き届いて、『ザ・金持ち』という素敵な庭園になっていた。(ツナギの私が混ざったら使用人の庭師に見えるな、今日は着てないけど)


「あの~はじめまして、高原と申します、奥に引っ越してきました。どうぞよろしくお願いします」

と夫婦で頭を下げた

「こちらこそ」と3人の中で一番大柄な年配のご婦人が上品な口ぶりで自己紹介を始めた。

「私はここの御子柴みこしばです。ひとりでバラを育てています。ほぼ毎日お茶しているので

ご遠慮なさらずにいつでもご参加くださいね」(オーさすがの貫禄と気品!)

「こちらがあそこの入り口にお住まいの馬場さん、こちらがあなたのお隣の仙波さんです」

「よろしくおねがいします」三人声をそろえ笑みでお辞儀を返された。

これがサンババとの最初の出会いだった

ちなみにサンババとは三人の婆さんという意味ではなく、3人とも名字が「バ」で終わるのでそう覚えたまでのこと。自分だってもう60を超え、立派な前期高齢者の婆なので同類である。


しばらくは、引っ越し後のあれやこれやと忙しく、家庭菜園もシーズンが始まるのでやることがいっぱいで、ガゼボには向かってサンババには挨拶程度しかできなかったが、今日は腰を据えて参加した、3人揃っていて、テーブルの上にはお菓子がてんこ盛りだった。

「ご主人は?」

「毎日ほぼテニスです、雨の時はジムかゴルフ練習で、体を動かしてないとだめな子供体質なんですよ」

(こういうのは根掘り葉掘り聞かれるよりこちらからサマリーを話した方がよい、面接みたいなものだし、相手の警戒を解くにも役立つ、これから長い付き合いなので最初が肝心)

「私は2年前まで介護に忙しく、自分を見失うほど闇の世界にいて、怒涛と疲弊の日々でしたが、やっと様々なことが片付き、自分の人生を始めたところです。老後は家庭菜園をやりたいと思っていたので庭のある家を探して、1年ほどあちこち探してここにたどり着きました。以前は2つ先の駅前のマンションで東京から呼び寄せた親と隣同士に住んでいました」

(これでわかってくれたかな)

こちらも何気にインタビューすると、バラ婦人もといミコさまこと御子柴さんは東京の中小企業の社長夫人で事務などを担当していたが10年前に夫を亡くし、今は息子夫婦が継いでいるとか。2区画持っていて隣の敷地にある家は福利厚生用の社員寮だが最近はあまり利用されてないとか、シニアにしてはガタイが大きいのは若い時にバレーボールをしていたからだそうだ。それもあってなんとなく頼れる姉御肌のイメージだ。

自分は好きなバラを育てているが、草刈りなどは業者に任せているとか(さすがお金持ち!) バラのイメージのように華やかな人だ。御子柴みこしばなからミコさまと呼ばれている。


馬場さんは最近ご主人を失くされ、やっと落ち着いてきたのだとか。ダンナさんはタクシー運転手で釣り好きが高じて、25年前に横浜から海の近くのここへ引っ越してきたとのこと

時々パートでお菓子工場で働いていること、今まで馬場(夫)さんの車で皆で買い物に行ったり、重宝されていたらしいが妻は免許を持っていない。

おとなしい感じで皆からはヨーコちゃんと呼ばれている。

趣味は洋裁だが最近はやっていないらしい。


うちの隣の仙波さんは馬場さんと同じ70代、40年前に離婚してひとり暮らし。ネットの株取引で生活しているらしく、本好きでどちらかというとインドア派。身なりはあまり構わず、自由に生きているようでやや肥満気味。レーコちゃんと呼ばれている。(アニメオタクっぽいがそれなら私と気が合いそうだ)


「それにしてもお菓子がたくさんですね」と山のように積まれたお菓子に見とれていると

「それハネなのよ」と馬場さんが言った。どうやら工場で包装がゆがんだ不良品、いわゆるハネられた商品だそうだ。「捨てるのはもったいないからもらってくるの、みんなもう飽きちゃったから今日はこれ全部持って帰っていいから」と私の前に押し出した(え~いいんですか~といいながらも顔はほころぶ、潤沢なおやつはありがたい)

3人とも気さくで、すぐに受け入れてくれ年上ながらあまり気を使わなくてよさそうな先輩たちだった。それから、ほとんど毎日ガゼボに誰かを見かけると挨拶がてらに少し寄ることにした


「あの~うちの前のお宅、ここらでは珍しく門があって防犯カメラが付いている方、挨拶に行ってもインターホン越しで済まされて顔を見てないんですが・・・」というと

「あ、あそこはちょっと訳ありなの。だから今はそっとしておいてあげて」とミコさま

(わけありか、母と幼児がいるようだがまだ顔ははっきり見ていない、わけってなんだろうか?)


ある日のこと、その日はミコさまと馬場さんだけだった。いつもの雑談をしていると

ミコさまの携帯が鳴った。メールらしかった。

「あらやだ、大変」ミコさまがちょっとびっくりして叫んだ。

「どうしたんですか?」

「レーコちゃんが 助けてって」

「えっ」


「仙波さんからのSOSをスマホで受けたミコさまと私たちは立ち上がり、急いで向かいの仙波さんの家へ向かった。

しかしドアを開けると、そこは信じられない光景が・・・



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