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プロローグ:全部パラレルだ!

 蒸し暑い夏の日。汗をダラダラと流しながら、私、若井カレンは歩いていた。

「暑い……温暖化のせい? 温暖化め……!」

 タオルを取り出し、汗を拭って、一息つく。

 あまりにも暑すぎる。暑すぎて嫌になる。暑すぎるのはダメだと思う。

「夏休み……早く来ないかな……」

 六月は梅雨で蒸し暑く、七月はシンプルに暑い。一体全体誰がこんなバカみたいな構成にしたのだろう。

  学校に行くのにも一苦労だ。その学校も、暑い中退屈な授業を受けるだけという地獄。

 学校行きたくない。学校辞めたい。学校滅びろ。

 心の中で呟きながら、私は足取り重く、学校へと向かった。



 無数の生徒で賑わう昇降口。数多のグループが存在する中、私は一人でいた。

 別に友達がいないわけじゃない。仲の良い人はそれなりにいる。けど、私は一人が好きなのだ。

 退屈な時に暇を潰してくれる存在。他人なんて、そんなものでいい。

「おっはよーございます! カレンさん!」

「……この声は」

 突然後ろから私の名前を呼ぶ声。振り返るとそこに居たのは──

「会いたかったです! カレンさん!」

 ニコッと笑う女の子。彼女の名前は、アムル・エメ・なんたら・かんたら・うんたら・なんとか。名前が長すぎて、後半は全然覚えていない。

 私より二つ下の学年の子で、あどけなさの残る童顔が可愛らしい。光に反射され輝いているように見える髪は丁寧にツインテールにまとめられている。髪型も相まって余計幼く見える。

「ここ……三年生の下駄箱だけど?」

 私は思わず首を傾げ、彼女に聞く。

 するとアムルも首を傾げ──

「関係なくないですか? 私、カレンさんに会いたいから来たんですよ?」

 と言いながら近づいてきて、右腕にぎゅっと抱きついてきた。

「痛いぃ……」

「えっへへ……朝一で抱きつかないと寂しくて死んじゃうんですよ私! 我慢してください!」

 さらに抱きつく力を強めるアムル。

 痛い。シンプルに痛い。



「はあ……」

 なんとかアムルを引き離して、私は三階の廊下を歩いていた。

 向かうのは自分の教室。三年二組の教室だ。

 廊下にはあまり人がいない。みんな、教室の中で話してるのかな?

「……あ」

 見覚えのある女の子が、前から歩いてきた。

 綺麗な薄茶色の髪はローポニーテールに纏められていて、少し自信がなさげな小動物のような可愛らしい顔。先ほど会ったアムルより少し小さい女の子。

 彼女の名前は薄幸みゆ。同じ学年の友達。クラスは違う。

「……あ、おはようカレンちゃん」

 私に気づくと、彼女は少し見上げるようにして、ニコッとしながら挨拶をしてきた。

「おはよう。みゆちゃん」

 挨拶を返す。すると、みゆはキョロキョロと辺りを見回し──

「ねえ、瑠璃お姉ちゃんがどこに行ったか知らない?」

 と、不安げな顔で言った。

 彼女の言う瑠璃お姉ちゃんとは、青柳瑠璃さんのこと。

 とても美人で、学校一の美人と名高い。スタイルも凄いし。だけど何故か髪だけはいつも若干ボサついている。

 同じ学年なのに何故みゆが彼女をお姉ちゃんと呼んでいるのかはわからない。

「今日はまだ見てないけど……」

 私は素直に伝える。

「そっか。見かけたら連絡してくれると嬉しいな……」

「うん、わかった」

「じゃあまたね、カレンちゃん」

「うん、またね」

 手を振りながら、私から離れていくみゆ。

 突き当たりを右に曲がるまで、私の方を見ていた。

「……青柳さんと連絡先、交換してないのかな?」

 私は小さく呟いて、廊下を歩き始めた。



「ふぅ……」

 テキトーに目が合った人に挨拶をしながら、私は自分の席について、一息ついた。

 その瞬間、背後に人の気配を感じた。

「カーレーン! カレンイズカレン! つまりあなたはカレン! 要するに私の親友! それすなわちカレン! ってことは私の親友!」

 声の主は大声で叫びながら、ぎゅうううううっと! めちゃくちゃな力で私に抱きついてきた。

 骨が折れたような音がした。痛い。

 私はゆっくりと、顔だけ後ろに振り返る。

 そこにいたのは、私の親友。吾妻ハルカ。

 私と背丈はあまり変わらなくて、ゆらゆら揺れているハイポニーテールが目立つ。顔はまあ、可愛い方かも。

「カーレン! カレン! カレン待ってたよーカレン!」

 アムルと違って、全身を使って全身に抱きついてくるハルカ。

 所々に彼女の柔らかい肌を服越しに感じて、少し恥ずかしくなる。

「だ……抱きつきすぎ……! 死ぬから……!」

「えぇ……そんな強い力で抱きしめてないよ?」

 と、言いながらハルカは私から離れてくれた。

 このゴリラ女。とか思いながら、私はため息をつく。

 ハルカとは中学生の頃からの友達だ。仲良くなったきっかけは忘れたけど、とにかく仲良しだ。

 しかもずっと同じクラス。だから余計に仲が深まっている。気がする。

「やっぱりカレンが抱き心地No. 1だなぁ……あはは……いい!」

「そうですか……」

 私はもう一度ため息をつく。

 なんていうか、もうベタベタイチャイチャしすぎていて、親友っていうより彼女って感じがする。

 もし、同性の誰かと付き合えって言われたら、ハルカを選ぶかも。

 なんてアホなことを考える私に呆れて、もう一度ため息をついた。



「面倒くさいなぁ……」

 私はため息をつきながら、一人で廊下を歩いていた。

 次は移動教室。向かう先は理科室。

 どうせなんか液体混ぜてわーって言うだけのしょうもない実験するんだろうなぁ、とため息をつく。

 結果がわかっている実験をするのって何か意味あるのかな? それ専門の道に進む人ならまだしも、ただの一学生には意味ないと思う。教科書で写真見るか動画サイトの動画観るだけでよくない?

「あ、カレンちゃん! おはよーございます! あ、昼だからこんにちはー! あれ? ハルカちゃんはどうしたんです?」

「……ゲッ」

 突然、後ろから私を呼ぶ声。

 この声は恐らく私の友達、薄幸ハッピーの声。

 先程会った薄幸みゆの双子の姉。嫌いじゃないけど、関わるとものすごい面倒くさい事になる事が多いから、あまり関わりたくないのだけれど。

「……はぁ、やっぱり」

 私がゆっくりと振り返ると、そこにいたのは予想通り、ハッピーだった。

 髪は丸みがかったショートヘア、あどけなさを残しながらも大人の女性を思わせる美人顔。ギャップがすごい系女子。

「やほやほ! 今日もハッピーですか? ノーハッピーじゃありませんよね? アーユーハッピー!?」

「……うん、ハッピー」

「ならオッケーです!」

 私がハッピーだと伝えると、ニコッとハッピーは笑った。

「では次のノーハッピー候補を探しましょう……恐らく妹のみゆがノーハッピーなはずです! さっき瑠璃ちゃんが一人で居ましたから! みゆ! 今お姉ちゃんがハッピーにしてあげますよ!」

 そう叫びながら、ハッピーは全力で廊下を走り去っていった。

「……みゆちゃん。かわいそ」

「ねー。私もハッピー嫌いじゃないけど、同じ家に住むのはちょっと大変そう……」

「ハルカ……いつのまに?」

「今さっき」



「……あ、カレンちゃん。こんにちは」

「青柳さん……こんにちは」

 ハルカが理科の先生に怒られているので、一人で教室に戻ろうとしたら偶然、友達の青柳さんに出会った。

 整った顔立ち。綺麗な──ちょっとボサボサだけど──ストレートヘア。私よりも高い身長。

 彼女を見て私は、安心感を覚える。

「今日は放課後練習無しだって。やったね」

「ほんと? よし……!」

 だって彼女は、青柳さんは、みゆと同じでごく普通の人だから。

 抱きつきアムルとか、抱きつきすぎハルカとか、ハッピーお馬鹿ハッピーと違い、普通の人すぎてすごく安心する。

 別に三人のことが嫌いというわけじゃない。一緒にいて楽しいし。けど疲れる。

 そんな疲れを癒してくれるのがみゆと青柳さんって感じ。

「じゃあ……また」

「うん、またね」

 私たちは手を振りながら、お互いすぐに背を向け、離れていった。

「……なーんか瑠璃ちゃんといい感じの雰囲気出してなかった?」

「ハルカ……いつのまに?」

「今さっき」



「ん……はぁ……」

 ようやく学校が終わり、私は一人で下校していた。

 ハルカとは道が違うし、アムルともみゆともハッピーとも青柳さんとも家は離れている。だから一人で下校。

「……明日も学校かぁ」

 学校終わった! と思うと同時に明日も学校かあ、とゲンナリする。

 あと何日で土日? 土日と部活あったら休めないし最悪だよ。

 部活入らなきゃよかった。私、青柳さんと違ってガチでやってないし。

「……まあ、いいか」

 学校は面倒くさいから好きじゃない。けれど、なんだかんだ言って私はこの生活を楽しんでいる。

 だからまあ、いいや。テキトーに楽しもう。

 そんなことを考えていたら、あっという間に家に着いた。

 玄関の扉を開けて、靴を脱いで、自分の部屋へ。

 制服を脱いで、部屋着に着替えて、カバンを置いて自室を出る。

 そしてリビングに向かい、スマホ片手にテレビのリモコンを操作し、テレビを付けた。

 テレビでは、占い番組をやっていた。というよりニュースの占いコーナー。

「魔法少女座のあなた!」

「あ、私だ」

「一週間以内に彼女が出来るでしょう! ウッキウキ!」

「……へー」

 "恋人"じゃなくて"彼女"なのかとツッコミたくなったが、やめておく。

「どーでもいいけど」

 私はソファに寝っ転がり、スマホをいじり始めた。

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