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第3話:一目惚れ(美月視点)

私、水城美月は高校2年生。いつも元気で明るい性格って周りから言われるし、自分でもそう思ってる。だって、笑顔でいると自然と楽しいことが増えるし、友達もたくさんできるからね。


毎朝鏡の前で整えるこのボブの髪も、みんなから「似合ってるよ!」って褒めてもらえる。赤みがかった茶色い髪と大きな目は、母親譲りらしいけど、これが私のチャームポイントかな。


私ってちょっと目立つみたいで、クラスの男子からはよく告白される。でも、本当に好きになれる人にはまだ出会ってない。だから、断ることが多いんだけど、それがまたちょっと悩みのタネなんだよね。


今日もまた告白されたんだけど、いつも通り断った。正直、心が動かないんだよね。好きになれそうな人がいればいいんだけど…。


放課後の教室で、いつものように友達と笑い合いながら帰り支度をしていた。クラスのみんなと過ごす時間は楽しい。友達は「美月、今日は一緒に帰らないの?」って誘ってくれたけど、今日はちょっと一人で考えたい気分だった。


「ごめん、今日は先に帰るね!」

笑顔で手を振りながら、教室を出た。表向きはいつもの私だけど、実は昼間のことが頭から離れない。屋上での告白…、今日の彼は少し強引で、断った後の顔が少し怖かった。


「はぁ…」


私はため息をつきながら、夕暮れの街を歩き始めた。いつも通りの道だけど、なんだか今日は不安な気持ちが拭えない。頭を下げて歩いていると、突然背後から声がした。


「水城!」


名前を呼ばれ、心臓が飛び上がる。振り返ると、あの男子がいた。怒りを込めた目で私を睨んでいる。


「なんで俺を無視するんだよ!さっきの返事、ちゃんと考え直せよ!」


彼は私の腕を乱暴に掴んできた。心臓がドキドキと速くなる。怖い――そんな感情が湧き上がってくる。


「やめて…」


震える声で訴えてみたけど、彼は耳を貸さない。必死に腕を振り払おうとするけど、彼の力は強かった。


「放して…!」


そう叫んだ瞬間、突然、彼の腕が大きな力で振り払われた。


目の前に現れたのは、屋上で昼寝していたあの無口な男子…櫻井凪人だった。


「えっ…」


一瞬何が起こったのかわからなかった。凪人は私のことなど気にも留めないように、冷たい視線で彼を見つめていた。まるで何も感じていないかのように無表情なその顔に、私は息を呑んだ。


彼は一言も言わずに、ただじっと相手を見つめるだけ。だけど、その視線には何か圧倒的な力があった。相手の男子生徒も、凪人の冷たい目に圧倒されて、舌打ちをしながら去っていった。


辺りに静寂が戻った。


「…ありがとう」


私は凪人に向かって震えた声で感謝を伝えたが、彼は無反応だった。ただ軽く頷くだけで、そのまま立ち去ろうとする。


「本当に、助かった…」


もう一度お礼を言おうとしたけど、凪人はやはり何も答えない。彼の無表情に戸惑いながらも、私は彼に目が離せなかった。


「この人、いったい何を考えてるんだろう…」


今まで自分に接してきた男子とはまるで違う。誰もが何かしら感情を表に出してくるのに、凪人だけはそれがない。かえってそれが私の心に強く残っていた。


「名前、教えてくれる?」


不意に口から出た質問。私は彼のことをもっと知りたいと感じていた。


凪人はしばらく黙っていたが、短く答えた。


「…櫻井凪人」


それだけ言って、彼は再び歩き始めた。


私はその背中を見つめながら、心の中で彼の名前を繰り返す。


「櫻井…凪人…」


冷たい風が吹く中、彼の姿がどんどん遠ざかっていく。立ち去る彼を見送るのが少し寂しかった。もっと話したかったのに。


その晩、私は凪人のことばかり考えてしまっていた。


「櫻井凪人…」


無愛想で無表情なのに、なぜか気になる人。どうして、あの時あんな風に助けてくれたんだろう。彼の名前を思い出すたびに、胸が少しだけ高鳴る。


「また、彼に会いたいな…」


そんな思いを胸に抱きながら、私はゆっくりと眠りについた。

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