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第13話:親友

凪人が図書室で美月と一緒に勉強し始めた数日後。


今日も放課後、凪人は美月と一緒に図書室で勉強するために向かっていた。少しずつ、美月と一緒に勉強することに慣れてきたものの、まだどこか照れくさい気持ちも残っている。美月の前向きな姿勢や明るい笑顔に、少しだけ自分が変わり始めていることを感じていた。


図書室に入ると、そこには美月が待っていた。しかし、今日はもう一人の姿があった。


「櫻井くん!今日はね、私の親友も一緒に勉強することになったの」


美月の隣に座っていたのは、隣のクラスの親友である小山優奈こやま ゆうな。明るく元気な性格の優奈は、クラスでも人気者で、いつも笑顔を絶やさないムードメーカーのような存在だった。


「やっほー!櫻井くん、よろしくね!」

優奈は元気よく手を振って挨拶してきた。


「…よろしく」


凪人は少し戸惑いながらも、優奈に軽く頷いた。明るい性格の彼女に、どう対応すればいいのか少しわからなかったが、美月が親友として一緒に勉強したいというのなら仕方ない。


「それじゃあ、今日も一緒に頑張ろうね!」


3人での勉強が始まったが、早速優奈が苦戦している様子だった。


「もー、全然わかんないよー!」


優奈はため息をつきながら、問題集を眺めていた。凪人は彼女のノートをちらりと見たが、かなり雑に書かれているように感じた。彼自身も勉強が得意というわけではないが、優奈の勉強方法には少し問題がありそうだと直感した。


「優奈、ここはこうやって考えるんだよ」

美月が丁寧に教えながら、優奈のノートに説明を書き加えていく。


「なるほどー…でも、難しいよ。櫻井くんは、こういうの得意?」


優奈は凪人に質問してきたが、凪人は少し困ったように答えた。


「いや、得意ってほどじゃないけど、まぁ…なんとか」


「えー、そうなんだ!美月はめっちゃ頭いいから、ちょっとくらい分けてほしいよね!」


優奈は冗談めかして笑いながら話すが、美月は微笑んでその言葉を聞いていた。凪人も苦笑しながら、「確かに」と心の中で思った。


優奈が美月から教えてもらう姿を見て、凪人は自分のペースで勉強を進めていた。だが、ふとした瞬間、優奈が彼に話しかけてきた。


「ねえ、櫻井くん、体育の時めっちゃすごいって美月から聞いたけど、ほんとにそんなにすごいの?」


その質問に、凪人は一瞬言葉に詰まった。自分が運動で目立つのは避けたかったが、美月が彼のことを親友に話していたのは少し意外だった。


「…いや、別に普通だよ」


「えー、謙遜しなくていいって!美月がすごいって言ってるんだから、本当にすごいんだよね?」


優奈は興味津々に凪人を見つめていたが、凪人はそれ以上何も言わず、再び教科書に目を落とした。


美月は、凪人があまり話したくなさそうな様子に気づき、優奈に軽く笑顔を向けて話題を変えた。


「優奈、次の問題に進んでみようか。こっちはどうかな?」


「あ、うん!ありがと、美月!」


優奈がすぐに新しい問題に集中し始めると、凪人は美月の方に小さく感謝の目を送った。美月は軽く微笑んで、それに応えるように頷いた。


勉強会が進む中、3人の間には次第にリズムができていった。


優奈が美月から教えてもらいながら一生懸命問題を解く姿を見て、凪人もどこかリラックスした気持ちで勉強を進めることができた。優奈の明るさが、図書室の静かな雰囲気を和らげてくれたのかもしれない。


「こうしてみると、勉強も悪くないな…」


凪人はそんな風に思い始めていた。美月と優奈という対照的な二人と一緒に勉強することで、今まで一人では感じられなかった新しい感覚が生まれていた。


その日の勉強会が終わり、3人は図書室を後にした。優奈は満足そうな表情を浮かべながら凪人に話しかけた。


「櫻井くん、今日はありがとね!私、普段はこんなに頑張らないんだけど、なんか今日はやる気出たよ!」


凪人は少し驚きながらも、優奈の元気な言葉に笑みを浮かべた。


「まぁ、また勉強会するなら、付き合ってもいい」


「ほんと!?よかったー!次もよろしくね!」


優奈は満面の笑みを浮かべ、美月と一緒に帰っていった。


凪人は彼女たちの背中を見送りながら、ふと心が軽くなっていることに気づいた。


「…勉強会、悪くないかもな」


彼はそう思いながら、少しだけ笑みを浮かべた。


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