黎明記~宇宙の章~④
責める声がいくつも重なる中、不思議な抑揚の声が響いた。
『お前が犯した罪は重い。しかし、様々な出来事が重なってしまったのも事実。
その一度だけの過ちで、お前を未来永劫輪廻から外してしまうのは、あまりにも酷だと私は思う』
その言葉を発した人影は、何故か背後が眩しく輝いて見えた。
『ここに集いたる、神々に…伏して願わくば、この憐れな存在に猶予を』
人影が頭を下げた。
『●●様。責任は何処に』
違う声が割って入る。
『私がこの魄を導き、私の**を目附に。全責任は我等が請け負う』
このモノは私を庇ったのか。
『信に』
『他神は如何か』
ピリピリと空間が震えた。
幾人もの視線を感じる。
それは肌に刺さるようなものだ。
『歪めた魂を戻すならば異存なし』
『然り』
『我も』
『●●様の処遇に感謝せよ』
どうやら審判が下ったようだ。
『お前を地上に派遣しような。長い長い時間をかけて、犯した罪を償うしかない。連れ帰った霊獣と、人間を地上に戻す、辛い旅になるだろう。出来るか?』
私を庇った人影が、語りかけてきた。
他の人影とは、存在感が違う。
『出来ないなら、お前はここで消えてしまう。私がお前を導き、正しき道を示そう』
出来るか?…と訊かれているが、拒否権のない、決定事項なのは理解できる。
私は頷いて意思を示した。
『神々に謝意を…』
人影は神と呼ばれる存在らしい。
ひとつ、ふたつ、と消えていく人影。
私を導く、と宣言した神と、幾つかの人影がその場に残った。
『さて、お前の処遇も決まった。早速だが、今の肉体が朽ちてしまう前に私と契約をしてもらおう』
急に眩い光が空間に降り注ぐ。
『他神の姿を見せるわけにはいかなかったが、私なら許されるだろう』
眩い光を背負った神は、獣と一緒にいたニンゲンに良く似た形をしていた。
私の身体はその場に自然と膝をついていた。
ああ、この存在に逆らってはいけない、と本能的に感じ取ったのだ。
細く白い指が、私の額に触れる直前で静止する。
なにかを呟いたあと、神は軽く私の眉間を弾いた。
『契約終了、悪いがお前は私の呪縛から逃れられないよ』
酷い宣言をされたのに、私の身体は力が抜けたようになった。
何故か、この神になら、縛られてもいいと思った。
『行こうか。私は●●。お前を導くものだ。そして、お前を影から見護るのが、目附である**』
名前であろう言葉を示されたが、残念なことに私の耳には理解できない言語だった。
『今はまだ必要ない名前だが、そのうち必要になる時が来る』
そうして、差し伸べられた白い手を、私はそっとすくいあげた…。