黎明記~戦国の章~⑥
翌日は予定を確認して昼見世に向かうことにした。
護衛に側近を指名して、久々に城を抜ける。
爺には渋い顔をされたが、まだ嫁を迎えた訳でもなく、小姓ばかりと戯れる訳にはいかないだろう。
自分の嫁を迎えることはないだろうが、やはり女性の柔肌も知っておかないと、色々障りがありそうだ。
『馴染みの妓女がいましたか?』
側近が声をかけてくる。
久々に城下の市井の様子も見たいから、と庶民の格好をしているが、なかなかに似合っている。
『前に足を運んだ時に、相手をしてもらった妓女がいてな』
『ああ、そんな話をしておりましたね。たまの息抜きでしょう。ごゆるりと』
『ああ。そうする』
護衛は、近くの茶屋で時間を潰すらしい。
甘いものが好きな男だ。
城では食べられない甘味を味わうといい。
以前世話になった遊廓へと足を運び、婆に妓女の名を告げた。
『ああ、どこぞの若様でしたかな。はいはい、夕凪でございますね。只今ご用意いたします。まずは、お部屋へと参りましょう』
婆は禿に声をかける。
『朝顔の間へご案内を。夕凪が来たら下がっていいから』
『はい。どうぞ、こちらへ』
まだ幼い禿についていくと、ある部屋へと案内された。
『姉さんはじきに来られます。しばらくお酒を楽しまれますか?』
襖を閉め、上座に座らされた。
『そうだな。一杯頂くか。酌をしてくれるか?』
『はい』
禿は少し笑って酒器を手にした。
『幾つだ?』
『はい、先日12になりました』
『励んでいるんだな』
彼女は盃に酒を注ぎ、小さな口に笑みを刻む。
『姉さん方のような、立派な花魁になりとうございます』
なるほど、しっかりしているな。
しばらく禿相手に酒を飲んでいると、襖の向こうから声がかけられた。
『お待たせいたしました。夕凪にございます』
『入れ』
声をかけると、静かに襖が開き、綺麗に着飾った妓女が正座で頭を下げた。
『失礼いたします』
決して若くはないが、歳を感じさせない不思議な印象の妓女、それが夕凪だ。
夕凪の入室と同時に、禿は頭を下げて下がる。
『ご指名ありがとうございます。何時ぶりでございましょうか』
あまり高位の妓女ではないが、何故か気になり、指名した。
それが出会いだった。
『忘れられていなかったか』
夕凪は小さく笑い、私を見た。
『芸も肌も求められず、膝枕をご所望された殿方を忘れられましょうか』
夕凪のような位の妓女なら、初回で床入りしても問題ないと言われたが、そんな気にならず、幼子のように膝枕を求めたのだ。




