黎明記~砂漠の章~⑫【**視点④】
朝になり、皇帝陛下がハレムに来られ刑が執行された、と宰相様を通じて私たちに伝えられた。
高貴な皇女さまが、牢屋に入れられて鞭打ちの刑に処されたと聞いて、私はその場に座り込んだ。
昔、別の奴隷商人が扱っていた奴隷が、鞭打たれたのを見たことがある。
馬や牛のように、革の鞭で打たれれば、人の柔らかい皮膚はすぐに裂けてしまう。
『皇女さまが、鞭打たれた…のですか』
『皇帝陛下直々に打たれたと、宰相様からお聞きしました』
乳母様が、震える唇で私に伝える。
『皇女さま…』
皇女さまの細いお身体では、耐えるなど無理でしょうに…。
さらに、見せしめに処刑されてしまうのでしょうか…。
涙が溢れて止まらない。
私が代わりになれれば…。
乳母様は筆頭側仕え監督の○○様をお訪ねに、なり、私は主人のいない部屋の片付けを始めた。
それから夕方になり、乳母様は戻って来られた。
『公妃様がたが声をあげてくださり、処刑は免れましたよ。ただ、宰相様より連絡が入りましたが、皇女さまのお傷が酷く、ハレムでは治療できないとのことで…』
やはりお傷が酷いのだ。
どこを鞭打たれたのだろう。
まだ若い女性だ、酷い傷痕にならないように望むばかりだ。
『治療のためにハレムを出られる、と表向きには発表されるようですよ』
まだ、安心はできないけれど、ハレムの牢屋に入ったままでないのが救いだ。
『ようございました』
『わたくしとあなたの今後ですが』
乳母様は私をしっかり見つめられた。
『わたくしは、乳母部屋に戻ることになりました。皇女さまがおられない今、他の姫様たちにつくことはできません』
『はい』
『あなたは、○○様のもとへ。どうやらお仕事があるようですよ』
乳母様は少し笑みを浮かべて、そう伝えてくださった。
その後、乳母様は乳母部屋に戻られてまとめ役に就任された。
私は筆頭側仕え監督の○○様のもとで、彼女の右腕となり、側仕えを教育するようになっていた。
あと、秘密裏に宰相様と連絡をとり、皇女さまの動向を知れるようにしてくださった。
決して口外はできなかったけれど、お元気だと知れて安心した。
長い年月、私はハレムで側仕え監督を支え、側仕えを教育して過ごすことになる。
そうして、元皇女さまを影から見守り、彼女がお隠れになったのを確認して、自らの生涯に幕をおろしたのだった。
砂漠の章で、連続更新は一旦お休みになります。




