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黎明記  作者: 蒼樹じゅん
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黎明記~砂漠の章~⑩【**視点②】

**視点。


第一皇女さまは、穏やかな性格のお姫様だった。

ハレムの頂点に君臨するのは、彼女の母親であり、次期皇帝になられる弟君をご出産なされた、皇妃様だ。


第一皇女さまには、もともと乳母様がついておられた。

乳母様は、皇妃様のお側仕えをされていたようで、皇女さまがお生まれになってからは、乳母様としてお側につかれたらしい。

私は、乳母様の右腕として召し上がられたことになる。


序列は厳しく決められているが、ハレムは皇帝陛下のご寵愛を受けた妃たちと、そのご息女が暮らす場所である。

ご子息は赤子の時期を過ぎると、別の場所へと移され育てられるのだそう。


女同士の醜い争いも身分によってはあるが、私はそんなものとは無縁だ。

ただ、母親である皇妃様は、皇女さまを愛しておられないのか、母娘の交流は一切ない。



皇女さまにお仕えして、数年が経過したある日のこと。

ハレムにキャラバンが来ると言う知らせが入った。

ハレムの女たちは外出が許されない。

一度入ってしまったら、皇女さまの降嫁か、死亡しないと出ることができない、透明な鳥かごのようだ。

外と交流できるのは、年に数回やってくるキャラバンくらいだろう。


キャラバンが到着したという知らせを受けて、湯浴み後の皇女さまに付き添って、商人たちがいる大広間へと向かった。

そこにはすでに、お妃方が集っており、色とりどりの宝石に目を輝かせていた。


皇女さまは、さほど興味がないのか、ちらりと宝石を見ただけで、息を吐き出した。


『部屋に戻るわね』

踵を返して、自室の方へと歩きだす。

『お待ちください、皇女さま』

私はそのあとを追った。


『大丈夫よ。少し庭を散歩して戻るから、お前は昼食を貰ってきてちょうだい』

皇女さまは、少し笑って答えられた。

湯浴み後の散策は、たまにされているし、護衛の兵士もいるから、危険なことはないだろう。


『かしこまりました』

私は頭を下げて、厨房へ向かった。


それから数日、皇女さまは湯浴み後に散策されて、しばらくしてお部屋に戻られることになる。

本来なら側仕えも付き従わなければならないのだが、危険がないとのことで見逃してしまっていた。


それが、後のハレム最大の事件に発展するとは、私も乳母様も、皇女さまご本人も思ってはいなかったのだ…。

本編と、侍女の設定が違うと気づかれたかと思いますが、皇女の知っている情報と、侍女の情報に違いがあります。

皇女は、侍女の過去をはっきりは知りません。

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