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蒼央の夢

〈sideアズール〉


ハッピーバースデー!

お母さん、おめでとう!!


いつも心配と迷惑ばかりかけてるから、お母さんのお誕生日にはお祝いしたかったんだー!


大切に残しておいた金色と銀色の折り紙で作った王冠をお母さんの頭に載せてあげたくて、いっぱいいっぱい練習して作れるようになったんだよ。


これ、お母さんにあげるね。


そう言ったらきっととびっきりの笑顔を見せて


嬉しい!

蒼央、ありがとう!


って言ってくれるんだ。


そんな夢をずっと抱いてた。


お母さんからのありがとうと嬉しそうな笑顔が見たくてずっとずっと来てくれるのを楽しみに待ってた。

でも……それから一度もお母さんの誕生日にお祝いできたことはなかったな。


金と銀の折り紙で作った王冠は僕のベッドの隣の棚の中でずっと出番を待っていたのに。

結局取り出すこともできないままだった。


そういえば、僕が病院で最後の日を迎えた時は、お母さんの誕生日だったっけ。

最後にあの王冠……お母さんの頭に載せてあげたかったな。


あの棚の中においたままになっていた王冠、どうなったんだろう。

今となってはどうなってしまったのかわからない。


結局最後までお母さんに王冠を被せる夢は叶わなかったけれど、蒼央が覚えてていてくれたから、ルーの王冠を作ることができた。


ずっと歌ってみたかったハッピーバースデーの歌を歌って、蝋燭の火を吹き消してもらって、おめでとうって言って王冠を被せてあげられた。


やっと蒼央の夢が叶ったんだよ。


僕もルーを喜ばせてあげられたし、本当に蒼央のおかげだ。


これからも蒼央の叶えられなかった夢をいっぱい叶えていこう。

ここは幸せな世界だよ。


「あお、しあわせに、なろう」


そういうと、暖かくて甘い香りのするおっきなものに包み込まれた気がした。


ああー、僕の好きなルーの匂いだ。

ずっとずっと嗅ぎたいと思っていた甘くて優しくて嬉しい匂い。


「だいすき、だよ……るー」


ギュッと掴むと甘い匂いが一瞬にして濃くなった気がした。


ああ、僕は最高に幸せだ。


<sideルーディー>


あおという不思議な名前を呟いてからそのままアズールは眠ってしまった。


それを無理やり起こしてまで、誰なんだ! と聞くのは大人げないし、あまりの狭量さに嫌われそうな気がする。

だが、私のアズールの心の中に私以外の人間が占めているのは正直面白くない。


しかも今まで一度も聞いたこともない、聞き覚えもない名前だ。

一体、どこの誰なんだ?


私は目の前でぐっすりと眠るアズールを前に悶々とした思いで見つめていた。


「よ、かったぁ……」

「お、めでとう……っ」

「おう、かん……」


よほど楽しかったのか、さっきのパーティーの夢を見ているようだ。

眠っているのに嬉しそうに微笑む姿がたまらなく愛おしい。


アズールが夢にまで見るくらいだ。

あの王冠は私の生涯の宝物として大切に保管しておかないといけないな。


「ありがとう、アズール。本当に私は幸せだよ」


そう呟いて、寝ているアズールの瞼にそっとキスを贈ると、


「あお……しあわせに、なろう……」


小さな声だったけれど、はっきりと聞き取れた。


まだアズールの夢の中にあおとやらが占めているのか。

私にアズールを返してくれ!


必死な思いに思わず起き上がり、目の前にいるアズールを抱き上げ腕の中にギュッと閉じ込めると


「だいすき、だよ……るー」


と甘い言葉が漏れた。


今のは私宛の愛の言葉。

やはりアズールはあおとやらよりも私を好きなのだ。

私たちは愛し合う二人。

決して誰にも邪魔などさせない!


アズールは今までもこれからもずっと私だけのものだ!

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