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言葉が出ない

<sideルーディー>


父上がアズールを抱っこしたいと言い出すのはわかっていた。

だからこそ、絶対に阻止しようと思っていたのに……アズールがいいと言ってしまえば、それを反対することなど私にはできない。


父上の膝に乗り、少し緊張しているアズールの可愛い顔は、私が抱っこしている時には決して見られない表情だ。


それが見られたのはまぁ良かったが、アズールの顔に触れようとするのは話は別だ。


アズールの色白で柔らかくて可愛らしい顔に触れていいのは私だけだと決まっているのだ。

まぁ、ヴォルフ公爵夫妻とクレイくらいは許してやるが。

父上は許すわけにはいかない。


私はさっと父上の腕からアズールを取り返した。


父上は急に奪われたことに一瞬怒りを見せたが、アズールが私の腕の中で途端に緊張を解いたことに気づくと、もう何も言いはしなかった。


その辺はさすが、国王。

空気を読んでくださるようだ。


「父上、そろそろ大広間にいかないと招待客を待たせてしまいますよ」


「んっ?あ、ああ。そうだな」


「あ、その前に……爺、ずっと紹介したいと思っていた、私の許嫁のアズールだ」


後ろでずっと控えていた爺の前に、アズールを抱っこしたまま近づくと、爺は今まで見たこともないほどに破顔した。


「アズールさま……ようやくお会いできました。ルーディーさまをご幼少の時から、今のアズールさまと同じくらいのご年齢の時から、ルーディーさまのお世話を仰せつかっておりました爺のフィデリオと申します」


「ひでいお? じぃー、らめ(だめ)?」


「ふふっ。爺とお呼びください。その方が嬉しゅうございます」


「じぃーっ! うれちぃーっ!」


「ふふっ、本当に可愛らしい。ルーディーさまと一緒にいらっしゃるとお似合いでございますね。そっくりな衣装が格好いいですよ」


「るー、かっこ、いい! あじゅーるも、かっこ、いい!」


アズールは爺が格好いいと言ってくれたことが相当嬉しかったようで、私の腕の中でぴょんぴょんと飛び跳ねている。

こんなにも可愛らしいのに、爺はお揃いの衣装が格好いいと言ったのはどうしてなのだろう?

これも年の功なのか?

やっぱりまだまだ爺なしでは、私はわからないことだらけだ。



<sideパウル(ホフマン侯爵家次男)>


公爵家の大広間はさすが、我が家の広間とは比べようもないほどに素晴らしい。

その大広間にヴンダーシューン王国の主要となる貴族たちが皆集まっている。

この会に招待を受けると言うことは、ヴォルフ公爵に目をかけてもらっていて、尚且つ国王陛下とも友好な関係を築けているという証なのだと父上が仰っていた。

わがホフマン侯爵家もその中に入れていただけたということは、誇るべきことなのだと嬉しそうだった。


たったひとつの後悔を残しては……。


このお披露目会に向かう途中もずっと父上は、本当ならパウルが……と何度も言い続けていたが、本当も何もお生まれになった時点で王子の許嫁と決まったのなら、もう変えようもない事実なのだ。


どんなお方なのか、興味は無限にあるが本当に奪い取る気など毛頭ない。

だから、もし普通に狼族として生まれてきて、私の許嫁となっていたら……くらいの妄想くらいは許してほしい。


そんな考えを頭に残したまま、大広間で会が始まるのを待っていると、ようやく入場の声が聞こえ始めた。


まずは、本日の会の主催者であるヴォルフ公爵夫妻。

そして、この招待客の中で最も身分の高い国王陛下。

今回の主役・アズールさまとその許嫁でいらっしゃるルーディー王子の順番のようだ。


国王陛下が入場されると、途端に緊張感が走る。

なんと言ってもこんなにも至近距離でお顔を拝見できることなど滅多にないのだから。


国王陛下が席に着かれ、とうとうアズールさまとルーディー王子の名が呼ばれた。


ああっ!

ドキドキが止まらない。


たらればの話をするなど愚かなことだが、なぜかその思いが止められない。

きっと父上の話をずっと聞かされていたからだ。


そうだ。

私のせいじゃない!


そう自分に言い聞かせて、入場扉に目を向けると


「――っ!! な、なんと…っ」


眩いほどに美しい人が、ルーディー王子に抱き抱えられているのが見えた。


大広間のあちらこちらから感嘆の声が漏れ聞こえる。


みんな言葉が出ないんだ。


あの美しさを表現するような言葉が見つからないんだ。


真っ白くて細くて長い耳。

キラキラと輝く金色のような真っ白のような美しい髪。

まだ一歳とは思えないほど、整った容姿にピッタリな言葉が見つからない。


まさか……アズールさまがあんなにも美しい人だったなんて……。


可愛い、あの子を私のものにしたい!!

絶対にだめだと頭の中で押さえつけようとする自分を縛りつけてでもあの子を手に入れたいと思ってしまうほど、私はアズールさまの可愛さにすっかり魅了されてしまっていた。

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