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美味しい料理と初めてのお泊まり

<sideアズール>


頑張ったご褒美にルーと一緒に寝たいと言ったけれど、僕の言っていることがわからなかったルーはお母さまに聞きに行ってしまった。


ダメだって言われるかなと思ったけれど、一緒に寝るだけでなく、お泊まりまでしてもらえることになった。


僕はただもふもふのしっぽに包まれて寝られたらそれで満足だったんだけど、ルーがお泊まりしてくれるのは楽しそうだからいいか。


いつもは夕食もお父さまとお母さま、そしてお兄さまと一緒にご飯を食べているけれど、そこにルーも加わるのはなんだか嬉しい。


しかもテーブルに並べられた料理はいつもの倍以上はあるかもしれない。

見たことのないたくさんの料理に驚くけれど、僕の前には最近よく置かれるようになった美味しい野菜と果物。


これすっごく美味しいんだよね。


いつもはお母さまが食べさせてくれるけれど、今日は隣に座ってくれているルーが食べさせてくれるみたい。


あーんと口を開けると、優しくにんじんを口に入れてくれた。


なんだかいつも食べているにんじんよりもずっと甘くて美味しい気がする。


もっともっと食べたいとねだると、ルーはその度に嬉しそうに僕の口に運んでくれた。

ルーって優しいな。


あっという間に目の前のお皿が空っぽになった。


「くぷっ」


「んっ? アズール、大丈夫か?」


「ふふっ。お腹がいっぱいになって満足したようです」


「もうお腹がいっぱいなのか? 信じられない……」


「アズールはまだ小さいですから。これでもいつもよりたくさん食べていますよ。きっと王子に食べさせてもらって嬉しかったのでしょうね」


「そうなのか、アズール?」


「だぁっ! おいちっ」


「おいち?」


「ふふっ。美味しかったと言っているようです」


お母さまはやっぱりすごいな。

僕の言葉をわかってくれる。


「王子と一緒だといつもよりよく喋るみたいですね。ねぇ、あなた」


「ああ。そうだな。アズールもいつもと違う食卓を楽しんでいるようだ。王子もたっぷりと召し上がってください。うちのシェフもお城の料理長に負けず劣らず美味しい料理を作るのですよ。なぁ、クレイ」


「はい。僕、フランツのご飯大好きです」


「ふふっ。フランツも喜ぶわ。王子もぜひどうぞ」


お父さまたちがルーにそういうと、ルーは嬉しそうに料理に手を伸ばした。


そして、僕がパチパチと何度か瞬きをしている間にどんどん目の前の料理がなくなっていった。


えっ? 何これ?


驚いている間にもどんどんお皿が空っぽになっていく。

と同時に新しく料理がたっぷり載せられたお皿が置かれていくけれど、それもあっという間に空っぽになっていく。


わーっ、すごいっ!!


僕の100倍くらい食べたんじゃないかと思うほどの量がルーのお腹に吸い込まれていった。


「うーっ、ぽんぽん」


「んっ? お腹? ああ、心配してくれたのか? 大丈夫だ。これくらいいつもの量だよ」


びっくりするけれど、お父さまもお母さまもそしてお兄さまも驚いている気配がない。

ああ、きっとこれがここでは普通なんだろうな……。


でも、本当すごいなぁ。



<sideルーディー>


可愛らしいアズールの食事を堪能した後で、たっぷりと食事を食べさせてもらった。


公爵邸の食事だけあって本当に美味しかった。

最初に用意されていたよりもたくさんの量を食したが、問題はなかったようだ。


「王子、ゲストルームにお風呂を用意してございますので、どうぞお入りください」


「ありがとう。だが、アズールはどうする?」


も、もしかして……アズールと一緒に風呂に入るのだろうか?

一抹の期待と、そして不安も感じつつ尋ねると


「アズールは私がお風呂に入れてから、ゲストルームに連れて行きますのでご安心ください」


とにこやかに返された。


いや、わかっていただろう。流石にアズールの裸を見るわけにはいかないということは。

裸なんぞ見たら、理性が崩壊してしまうのは目に見えている。

まだ私にはそれを我慢できるほど大人になりきれていないのだから。


アズールを公爵夫人に預け、執事にゲストルームに案内される。

寝室の奥にあるバスルームに行くと、着替えも用意されていた。


いつも城で着ているのと同じ寝巻きが用意されているのは、きっとこの時間の間に城から持ってきてもらったのだろう。


王家の風呂とあまり変わらぬ豪華な風呂に満足しながら、寝巻きに着替えて風呂から出た。


緊張に胸を震わせながら、静かにソファーに座る気にもなれず、部屋中を無駄に歩き回っていると、扉が叩かれる音が聞こえた。


「王子。アズールを連れて参りました」


「は、はい。どうぞっ」


若干声が裏返った気がするが、気づかれてはいないだろう。


扉が開かれ、公爵夫人が連れてきたアズールを一目みて、一瞬時が止まった気がした。


温かい湯に浸かったからか、真っ白な顔がほんのりピンクに染まり、すでに眠たくなっているようで、トロンとした目を私に向けている。


「くっ――! 可愛いっ!」


こんな可愛らしいアズールと一晩一緒か……。


私は過去最大に心臓をドキドキとさせながら、アズールを受け取った。

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