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もふもふ大好き

<sideルーディー>


「アズールっ!」


「うーっ!!」


いつものように出迎えてくれる可愛らしいアズールの隣にアズールの兄、クレイの姿が見える。

この家で唯一私に敵対心を見せるのがこのクレイなのだが、なんだ?

今日はそんな気配を感じない。

一体どうしたのだろう?


「クレイ、アズールと遊んでくれていたのか?」


「はい。私はアズールの『にぃに』ですから」


「『にぃに』? なんだ、それは?」


「私のことです、お兄さまとまだ言えないアズールが私をそう呼んでくれたのです」


「そうか……それは、よかったな……」


「はい。アズール、王子さまが来られたから、私は部屋に戻るとしよう。王子さま、それでは失礼します」


今まで私には見せてくれたこともないにこやかな笑顔を浮かべながら、クレイは部屋を出て行った。


今までのクレイとはあまりにも違いすぎて呆気に取られていたが、


「ふふっ」


と急に公爵夫人が声をあげて笑い始めた。


「公爵夫人、何か知っているのか?」


「はい。生まれながらに許嫁である王子に自分の存在が負けているのではないかとずっと心配だったのでしょう。けれど、クレイはアズールに『にぃに』と呼ばれて、自分もアズールにとって唯一だとわかってようやくホッとしたようです。これまでのクレイの失礼な態度をお許しくださいますか?」


「ああ、それは気にしていないから大丈夫だ」


「気にしていらっしゃらなかったのですか?」


「ああ。アズールのような可愛らしい弟ができて喜んでいるところに、急に許嫁などと言われて自分との時間を奪われた日には、恨みがましい目で睨みつけたくもなるというものだ。いずれ、納得してくれるだろうと思っていたから、こんなにも早く理解を示してくれて、かえってお礼を言いたいくらいだ。クレイは本当に賢い子なのだな。こんなにも素晴らしい子が跡継ぎならば、公爵家も安心だろう」


「王子にそう仰っていただけて嬉しゅうございます。せっかくのアズールとの時間ですから、そろそろ部屋に行かれて構いませんよ。今日は王子が来られるのが少し遅いようでしたので、アズールが寂しがっておりました」


「――っ! アズールっ! そうだったのか? アズールのお披露目会についての話を公爵としていたのでな、遅くなって申し訳ない」


アズールを抱き上げ、腕の中に閉じ込めると


「うっ?」


コテンと首を傾げながら尋ねているようだ。


「くっ――!」



そんな可愛らしい顔で見つめられたら、心を鷲掴みにされているような気になる。


「お披露目会についてのお話は御衣装のことについてでございますか?」


「ああ、そうだ。私が責任持ってアズールの衣装を仕立てるから安心してくれ」


「ふふっ。そう仰られると思っておりました。アズールもきっとその方が喜びますものね」


「公爵夫人がそう思ってくれていたのならありがたいな」


「あの、王子! 一歳のお披露目はなんといっても一生に一度でございますから、アズールを思いっきり可愛らしくしてあげてくだされば、私はいうことはありませんから!」


「あ、ああ。楽しみにしておいてくれ」


目をキラキラと輝かせ、圧を送ってくる公爵夫人の姿に、えも言われぬ表情になったがとりあえず返事を返しておいた。

私はアズールを抱き上げると、急いで二人の部屋に向かった。


<sideアズール>


「うーっ、もふもふぅーっ」


ルーがお母さまとお話を終えるまで、ずっともふもふに触るのを我慢していた。

だって、邪魔しちゃダメだもんね。


でも……しっぽもパタパタしてるし、お顔のもふもふもなんだかいつも以上に気持ちよさそうだし、もう触りたくて触りたくて仕方がなかった。


やっとお話が終わって抱き上げてくれた瞬間、僕の顔の近くにもふもふが近づいてきて、我慢できなくなってしまった。


両手を伸ばし、もふもふを堪能しているとルーは嬉しそうに笑っていた。


「ああ、本当にアズールは私が好きなのだな」


「うーっ、ちゅきぃーっ!」


「えっ? 今、なんといったのだ?」


「うっ?」


「アズール、頼む! もう一度今の言葉を言ってくれないか?」


ルーがすごく必死だけど……えっと、なんて言ったんだっけ?


もふもふ触ってたら……


――本当にアズールは私が好きなのだな。


あ、そうそう!

そう言われたから、返したんだった。


改めていうのはなんとなく恥ずかしい気もするんだけど、まぁウソじゃないし。

言ってほしいと言ってるんだから、言った方がいいんだよね。


「うーっ、ちゅきぃーっ」


「くは――っ!!」


ルーの目を見ながら言ってみると、ルーは突然苦しそうにしっぽをバシバシと床に叩きつけた。

それでも僕を腕から外そうとはしない。

ずっと僕をギュッと抱きしめたまま、しっぽだけが激しく動き続けていた。

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