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話してみよう

<sideルーディー>


考えてみれば、『あお』のことを話しても皆とアズールとの関係が壊れるわけではないのだ。

反対に、アズールと共に『あお』のことを皆が守ろうとするのではないか。


それくらいにアズールは皆に愛されているのだ。誰一人、『あお』のことを信じない者などいないだろう。


アズールにとっても、隠し事をせずに過ごせるのは気持ちも楽になるだろうし、それに『あお』だって、自然に話題になれば嬉しいはずだ。


とりあえずはアズールにあの蜜のことについてだけ確認しておかないといけないな。


アズールを迎えにアリーシャ殿の部屋に向かうと、扉を叩く前に先に扉が開いた。


「アズール!」


「やっぱりルーだった!」


ぴょんと嬉しそうに私の胸に飛び込んでくるアズールを抱きしめる。ああ、私の足音で気づいてくれたのか。


「お土産のケーキは渡せたか?」


「うん。お母さま、美味しいって言ってくれたの」


「そうか。んっ? アズールからイチゴの匂いがするな」


「さすがルーだね。お母さまがね、アズールが好きだからってイチゴ食べさせてくれたのー」


「食べさせて……そうか、よかったな」


今のアズールの言い方からすると、きっとアリーシャ殿がアズールに食べさせてあげたのだろう。

私以外の人間からアズールが食べさせてもらうのは許し難いが、アリーシャ殿は別だからな。


イチゴのケーキを入れておいたのも、アリーシャ殿ならきっとアズールに食べさせるだろうと思っていたし、アズールが嬉しいことはきっと『あお』も嬉しいはずだからな。


「ねぇ、ルー」


「どうした?」


「アズール、いつかルーの赤ちゃん産むの!」


「な――っ!! そっ、えっ? ど、どうしたのだ?」


「お母さまが教えてくれたのー! 大人になったら、アズールがルーの赤ちゃんを産むんだって。びっくりだよね」


いやいや、突然そんなことを告げられて私の方がびっくりなのだが……。


「ルーは、赤ちゃん欲しい?」


「えっ?」


「アズールとの赤ちゃん……欲しくない?」


「そんなことはない! 欲しいに決まっている。私が欲しいのはアズールとの子どもだけだ」


びっくりしてすぐには返せなかったが、これだけはきちんと伝えておかなくては!


「そっかぁー。さすが、大人だねぇ」


私の言葉にアズールは嬉しそうに笑う。アズールもいつか本当に私の子を産んでくれるのだろうな。


くっ――!!


昨日から欲望を抑えつけているせいで、想像するだけで滾ってくる。


「あらあら、よかったわね。アズール」


「うん。僕も大人になったらそう思えるかな?」


「ええ、もちろんよ。だから、今は焦らなくていいの。少しずつ少しずつ大人になっていくんだから」


アリーシャ殿の言葉にアズールは嬉しそうに頷いて、私に視線を向けた。


「ルー、アズールが大人になるまで待っててね」


「ああ。私はずっと変わらないから安心してくれ」


「ルー、大好きっ!」


「私もアズールが大好きだよ」


小さなアズールを強く抱きしめると、ふわりとアズールの匂いが漂ってくる。


ああ、これ以上は抑えられなくなりそうだ。


とはいえ、アズールと今離れるわけにはいかないが……。


「アズール、お母さまのことも好き?」


「お母さま! もちろんだよ!」


「嬉しいわ。アズール、こっちにいらっしゃい」


アリーシャ殿が手を広げると、アズールは一瞬私を見たが、


「行っておいで」


というと、嬉しそうにアリーシャ殿の胸に飛び込んでいった。


ふぅと心の中で安堵のため息を漏らすと、アリーシャ殿が私を見て優しく微笑む。

私が困っていたことに気づいてくれていたのだろう。さすがだな。


アリーシャ殿には、先に『あお』のことを教えていても良さそうだ。


「アズール、アリーシャ殿に『あお』の話をしてみないか?」


「ルー、それは……」


「アリーシャ殿ならアズールのことを疑ったりしないと思うぞ」


そう言ってやると、アズールは少し悩んでいたけれど意を決した様子でアリーシャ殿を見つめた。


「あのね……お母さま。僕……ずっと、内緒にしていたことがあるの。聞いてくれる?」


「ええ。アズールのことならなんでも知りたいわ」


そう言って、アズールを優しく抱きしめていた。


「あのね、僕……アズールとして生まれる前の、記憶があるの」


「アズールの、前の記憶?」


「うん……僕ね、こんなお耳も尻尾もないところにいたの。蒼央って名前でね。生まれた時からずっと病気で……ずっと、ひとりぼっちだったの」


「どうして、ひとりぼっちだったの? 『あお』くんのご両親は?」


「僕がずっと病気だったから邪魔だったみたい。会いに来てくれなくて……やっと会いに来てくれた時、言われたんだ。どうして生まれてきたんだって。病気なら、さっさと死んでくれたらよかったのにって」


「そんな――っ、子どもにそんな酷いことを?」


アズールの話す、可哀想な『あお』の話に、アリーシャ殿は涙を潤ませているように見えた。

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