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異世界戦線【非公開】  作者: Chira
第二部 女神降臨
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帝の目覚め

第二部は完結後に修正予定です。時系列が合わなかったり、矛盾のある会話の内容があるので読むのはあまりお勧めしません。しばらくお待ちいただけると幸いです

一寸先が見渡せないほどの闇が広がっている。さざ波が聞こえ、それ自体が光源となっているかわからないが、赤い海と砂浜、そして六つの椅子と円卓が並べられているのがうっすらと見える。


「ブロフェンの遣いは…そうか、よくやっているのか。」


「確かにブロフェンはよくやっているかもしれないけれど、アルナスのことも少しは気にかけてほしいわ。毎日のように『女神』の遣いが殴り込んできて、弱いからまだいいけれど、手数で押されると手がかかって面倒なの。」


ゴスロリ服を着こなす少女が、感情のこもっていないような口調で話しかけるが、女性はそれを気にも留めず、何かを見つめ続けたまま動かない。


「ルーレ、其方には沢山の『同胞』がいるではないか。なぜ、頑なに使おうとしない?」


「はあ、相変わらず話が通じないわね。もういいわ、結局私以外に誰も来ないままつまらないおしゃべりをするぐらいなら、私の役目に戻らせてもらう。」


そう言い少女は海の中へ歩いてゆく。まもなく、少女の姿は見えなくなり、ぴちゃぴちゃという足音が響き続けていた。



甲板から海を見渡してはや3時間、カリン隊長の言っていた通り、陸地が見えてきた。今まで護衛していた駆逐艦は船団から離れていき、段々と小さくなっていく。


「陸地が見えてきましたね。そろそろ戻りますか」


アレクトはそういえば朝から何も食べていなかったことを思い出して、腹ごしらえも兼ね自室に戻ることにする。

船はまあまあな大きさとはいえ、波に揺られてまっすぐ歩くにはかなりの体幹が必要だろう。


「アレクト、そろそろリーデンブルグに到着するぞ。準備はできているか?」


「え、もうですか?さっき見てきましたけど、陸地までまだ距離がありましたよ?」


「なら急いだほうがいい。港に到着したらすぐに移動するからな。最初のときのように遅れるなよ」


カリン隊長に釘を刺されてしまったので、駆け足で部屋に戻って食べ物を口の中に詰め込み、軍服に身を包む。…やっぱりカリン隊長みたいに足が長い方がかっこよく見えて羨ましい。


「準備はできたな。急ぐぞ。今後の予定は車内で話す。」


カリン隊長の後をついていって車に乗り込む。中に入るとヒーターの熱が暖かい。


「アレクト、今後の予定だが、まず皇帝陛下に謁見する。その後は速やかに参謀本部に移動する。王宮は広い。迷子になるなよ?」


「皇帝陛下に謁見ですか!?なんで急にそんな話が出てくるんです?私ってもしかして知らないうちに、とんでもないことをやらかしていたんですか。」


「そういうわけではない。もし、そのようなことがあったらまず私が注意を受けるだろうからな。確かに皇帝陛下に謁見するとなれば、基本的に名誉なときか、不興を買ったときなのは確かだ。ただ今回はどちらでもなく、今回は陛下直々にアレクト、お前に会いたいということだそうだ。」


カリン隊長の思いもしない発言に私は「え?」と言うのが精一杯だった。私はリーベ家の出身だが、いくらなんでもそれだけ、というわけではないだろう。


「私は陛下に一度もあったことがないのに、不思議なこともあるんですね。」


「お前の言うことが本当ならば一度会ったことがあるんじゃないか?」


「あ、もしかして、皇帝の間のことですか?あの人が皇帝陛下なら、結構フレンドリーなんですね。緊張して損しました。」


「お前、あそこはプライベートな空間なんだから、謁見するときもあれでいい訳ないだろう。はあ、一応と思って確認しておいて正解だった。なぜ礼儀に敏感な貴族に私が指導しなければならないんだ…」


すいません、本当にカリン隊長様様です。隊長がいなければ私はいったいどうなっていたことか。


「ああいっておいてなんだが、基本的には私達は謁見の時は許可が下りることはない。だからむやみに話しかけたりしなければ大丈夫だ。…本当に頼むぞ。」


「わかってます。流石に一族全員が破門なんてことにはならないと思います。」


自分的には冗談で言ったつもりが、カリン隊長は項垂れてしまった。



しばらくは疎に貴族の屋敷が見えるだけだったが、だんだんと建物の数が多くなってきた。だが、その中で一際目立つ城があった。リーデンブルグ城。皇帝の生活の場であり、実質的なコルト帝国の政治の中心。


「私、人生に一度は行ってみたいと思っていたんですよね。まさか、こんなに早く叶うなんて。」


城の壁は石で出来ていて小さな声でもよく響きます。カリン隊長が余計なことをするなという目で見てくるので、もうしゃべってはいけなさそうです。長い廊下をひたすら歩いていくと、急に隊長は立ち止まり、石の隙間に剣を差し込みます。


「…いくぞ。」


剣を差し込んだ場所はみるみるうちに変形し、石に隠れて見えなかった扉が姿を表した。隊長がその扉を開けると、その奥は不自然に暗く、まさに一寸先は闇の状況です。隊長の手を受け取って、その後をついていくと目の前に、大きな扉が現れました。隊長が横に立っている守衛に視線を送ると、守衛は槍を軽く数回突く。すると、人の手ではびくともしないであろう扉が一人でに開く。なぜか奥から冷気が流れてくるのを感じて不気味に感じる。再び歩みを進めていくと、…あれ?カリン隊長がいない。辺りを目を動かして確認してみると、周りから視線を感じた。まるで、私を品定めしているような気持ち悪い視線。声をあげて逃げ出したくなるのを喉元で堪えて、無意識に後ずさりしようとしている足を理性で前に出す。しばらく何も進展はなかったが、だんだんと進むにつれて視界がよくなる。だけど、まだ気を抜く訳にはいかない。カリン隊長の気配を探しながら進んでいくと、終点だろうか。玉座に座る幼いながらも威厳のある子供と、こちらを警戒して鋭い視線を向けてくる青い目の青年がいた。


「…?皇帝陛下の御前であるぞ。なぜ平伏しない。」


「ガーデムハイル、ここには余とお前しかいない。わざわざ取り繕った態度を取る必要はないではないか。それに余は既にこやつと会った事がある。わざわざ警戒する必要はない。」


そう言ってガーデムハイルと呼ばれた男性を窘めると、陛下は私の前まで歩み寄り、デリカシーのかけらもなく私のことを品定めするような目線で眺める。そしてそのまま、腰にかけてあったケトゥーヴァを流れるような手つきで取る。ケトゥーヴァから体を嘗め回されているように見られているイメージが伝わってきて気持ちが悪い。


「ヴィリー?乙女にそのような不埒なことをするなんて感心しないわ。もちろん、私は構わないけれどね。」


「む?その声はアルテーヌか。何の前触れもなくどうした。いつもこちらの都合をよく理解してあまり姿を現さない其方にしては珍しい。それで今日は何をしに来た。」


玉座の裏側から容姿端麗で、気のせいかもしれないが少し光って見える女性が突如姿を現したかとおもうと、皇帝をヴィリー呼びし、まるで幼い子供をしかるように注意している。怒涛の展開に頭が追いつけなくなっていると、先ほどまで空気の役に徹していたガーデムハイルが、アルテーヌと呼ばれた女性を窘める。


「アルテーヌ様、今はご客人もおりますので、言動には注意していただきたく…」


「ガーデムハイル、何度も言うが、こいつは大丈夫だ。余と繋がったこともあるし、今回呼んだのもそのためだ。」


「ヴィリー?カリンちゃんだけでなく、また女性を招待したのー?」


「ああ、だがそんなに怒ることではないと思うが?」


頬を膨らませてヴィルフリードへの不満を露わにしていアルテーヌだったが、ヴィルフリードが持っているケトゥーヴァが視界に入ると、そんなことは忘れて、驚きと歓喜が混ざった微笑みが零れる。


「あら、久しぶりねケトゥーヴァ。ここでなら『いつもの』姿に戻れると思うのだけど、そちらの姿の方が好みなのかしら?それもそうよねぇ。それが『初めて』ですものね。」


アルテーヌさん?が語り掛けていると、ケトゥーヴァから恥ずかしさで赤面しているイメージが伝わってきて、こちらまで恥ずかしくなってくる。そして、プルプルと震えていたかと思うと、突然、破裂したように軽い爆発音と煙が辺りを覆う。


「うぅ、アルテーヌのバカ!そんな言い方しなくてもいいじゃない!」


腰回りから声が聞こえたので視線を向けると、そこには、ケトゥーヴァの姿があった。初めて見る少女だ。と直感は告げるが、記憶として参照すると、ケトゥーヴァと理解される。


「アルテーヌさんはケトゥーヴァと昔からの知り合い?なんですか?」


「あら、自己紹介が遅れていたわね。私はアルテーヌ。もしかしたらこっちの名の方が有名なんじゃないかしら、護神剣アテヌバ。」


御伽噺で聞いたことがある。正確には建国神話にも関わっているらしいが、年がたつにつれてそれは架空の話だと自然と理解するだろう。だけど、神々しさと、言葉の端々から聞こえてくる人だとすると不自然な言葉から、その言葉を信じないという選択肢はなかった。


「そのような格好では話しにくいでしょう?」


そう言ってアルテーヌが指をすっと上げると、地面が粘土のようにせり上がり、粘土細工のような机と椅子が現れる。アルテーヌが今度は指を下げると確かに粘土細工だったそれらは一瞬の間にして、見事な彫琢品に変化した。座るように促されて席に着くと、私の他にはヴィルフリード、アルテーヌ、ケトゥーヴァが座る。ガーデムハイルは給仕に徹している。


「まずはあなたが思っている疑問を払拭することからね。そうね、どこから話せばいいかしら…」


「全て話せば問題なかろう。」


ヴィルフリードはそうそっけなく言うが、アルテーヌは困ったように頬に手を当て首を傾げている。


「端的に言うと私は確かに神だけれど、旧支配者みたいな感じに何か明確な起源を持っているわけじゃないの。」


もう既に話についていけていないが、アルテーヌさんは、私の事を気にもしないで話し続ける。


「今あなた達が相手取っている…確か、コードネームがついている人。それが旧支配者よ。」


その後もこのような感じで話していていたが、多分こんな感じの内容で合っていると思う。


星に祝福した神々の眷属同士の戦いに決着がついた後、その中から支配者が現れた。彼女とその仲間はしばらくすると満足し、深い眠りについた。すると戦いに負けた眷属の主神は彼らの目を盗んで地上で繁栄する生物に呪いをかけた。そうして生まれたのが人間。人間は神から与えられた知識と、それを扱うための演算装置を与えられ、今までとの生物とは異なる形で繁栄していった。だが、眠りについた支配者はその異変に気づき目を覚ます。するとそこには、我らが神が望んだものとは異なる形の生物がいるではないか。彼らは怒り、制裁を与えようと再び現世に顕現した。人類は必死に抵抗したが、神の前には赤子と等しく、命を散らすばかり。人々は祈った。形のなき救世主を。長い間耐え忍び機会を伺ってきたが、ついに彼らの土地は一つの島だけになってしまった。誰もが死を覚悟したが、その時に祈りが通じたのか女神が降臨して人間と手を取り彼らと戦い始めた。そして長い戦いの末、神々のあいだである約束が結ばれた。今の状態に手を加えず、変わらない限り、こちらから手を出さない、と。


「今回も同じような理由で彼らは現世に再び顕現したの。だけど、現世に顕現してしまった影響で力が漏れ出し、神に近しいものはその力の一端に触れられるようになってしまった。それが幸か不幸かはわからないけれど、少なくとも人間が団結することは無くなってしまったわ。」


対して心配をしていなさそうなアルテーヌさんと、話に飽きたのかお菓子を頬張っているケトゥーヴァ。大事だと捉えているのは私だけなのだろうか。


「そういえば、話の中に女神と出てきましたが、それはアルテーヌさんのことですか?」


私がそう聞くと、ヴィルフリードが私の質問に答えてくれる。


「いや、アルテーヌはその時は剣としてその場にいた。そして、その女神がお前の次の任務に関わってくる。」


ヴィルフリードはそこで一旦話すのをやめ、紅茶を口につけてほおと、息を吐き、一旦間をおいてから口にする。


「奴の名は……」


◇◆


「あれれー?皇帝に謁見を望んだのに、目前で弾かれ、恥をかかされたカリンさんじゃないですかー」


「フェリーヴェ、そのような言い方はやめなさい。元々カリンは招待されていなかったのだから当たり前のことでしょう?」


「えー、ただ事実を言ってるだけじゃない。」


そう言って嗤いながら少女が入室してくるが、カリンは興味を示さず、再び瞼を閉じる。


「すまないみんな。時間厳守と言っておきながら遅れてしまったね。フェレ、そのぐらいにしておけ。」


青年がそう言うと、同時に入室してきた下顎が金属でできている大男が軽々しく、少女を持ち上げる。


「離しなさい!平民の癖に生意気ですわ!」


「ガキに大男に狂信者。お前の部隊にはまともなのがいないのか?」


カリンがそう言うと青年はカリンを見て嬉しそうに笑みを浮かべる。カリンはそれに再会を喜ぶような、いつまでたっても変わらない姿への呆れも混じった表情で言う。


「久しぶりだな。シェルナー」

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