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6 吸い込まれそう

 シャロンは夢を見た。

 夢の中で、幼い頃を思い出していた様だ。そこには、父に、昔に亡くなった母がいた。


「あなた、聞きましたよ。私に王妃を退いて貰うなんてうそぶいてらっしゃるとか。一体どういうおつもりです?」

 母の声だ。厳しい口調で父を問い詰めていた。

 父は父で、はぁぁぁ、とわざとらしいため息をつく。

「尊大な女だ。王の取り決めた事に意見しようなどとは」


「取り決めた? あなたの勝手でお決めになったのでしょう? 陛下一人で国を治めているのではありませんよ。そんなことが許されるとお思いですか?」

「まったく、こんな時だけは威勢が良い。いつもは静かで、何を考えているのか分からない女が」

「話をそらさないで下さい! そんな事をなさるなら、私の実家が黙っておりませんよ」


 パンッ!

 二人の言い争いは加熱し、最後には乾いた音が響き渡った。

「もううんざりだ! 実家の威を借りなければ何も言えない女が!」

 父はそう吐き捨てると、その場から立ち去った。

 残された母は、しばらくしてから微かな嗚咽を上げ始めた。

 幼いシャロンは、母が父に叩かれて泣いたのだろうと感じ取った。


 父と母のやり取りを、その時のシャロンは物陰に隠れて聞いていた。ただならぬ二人の様子に恐れをなし、気づかれる前にとっさに隠れたのだ。

 それまで一度も聞いたことが無かった、母の厳しい声。それを罵る父の声。どちらもシャロンにとっては聞くに堪えない物だった。母の泣く声にすら驚いて、その場に硬直していた。



 あの時、どうして母を慰めなかったのか。あれからずっと後悔が募っている。

 夜が明け、目を覚ましたシャロンは、ベッドの上で夢を思い起こしながら頭を抱えた。


 強く後悔したのには理由がある。その数日後に、城の堀に浮かんでいる母が見つかったからだ。

 王宮内では身投げしたと噂が立ったが、その真相について知る者はいなかった。しめやかに葬儀が行われ、母の死の話はそれで仕舞いになった。


 そして、その後すぐ、ミレイアが新しい王妃として迎えられた。



 身投げしたなんて噂を聞いてしまえば、あの時慰めなかったから死んでしまったのだと、シャロンは自分を責める様になった。

 しかも、そんな所にシャロンが隠れていた事を知る人はいない。誰にも打ち明ける事が出来ないまま、シャロンはその責め苦を心の中に閉じ込めていた。


『こんなことも出来ないの? 役立たず』

 ずっとミレイアの散々な言葉に傷つけられ、シャロンはそれを良しとしていた。それは、母を慰めなかったことに対する贖罪だと考えていたからだと、今のシャロンは振り返ってそう思う。

 自分の心を殺し、人の意思に添うように行動するのも、そう。安易に何でも受け入れてしまうのも、そう。ずっと、それが正しい事だと思っていた。


 でも、嫌だと言う感情が生まれて来た。

『離れたくない』

 あの時、アズールに向けた言葉こそ本心だった。

『シャロン……離したくない』

 アズールはそう言った。その言葉が真実であると、シャロンは信じている。


 何のために行動するのか。自分の心を殺して行動することに意味はあるのか。

 大事な人のために生きたいと願ったからこそ、そんな疑問が湧いて来た。



 普段は物静かでおおらかな心を持つ母が、王を相手に厳しく問い詰めるのは、とても勇気のいる事だっただろう。そうまでして父を諫めたのは、王妃としての立場を守るためだったのだろうか、父を愛していたからだったのだろうか。

 考えても答えは出ない。けれど、母が自分のために立ち上がった事だけは、紛れもない事実だ。



***



 調印式は、その日の午後に行われた。

 式とはいえ、大々的に行われる訳では無く、会場に集められた主だった参列者は、従者を除けば10人にも満たない。他は聴衆として入場を許可された者が数十人いたが、彼らは皆エル・オークストーの人間だった。


「ウィルカーディン女王のおなりにございます」

 召使いの呼び声と共に、シャロンは会場に入った。

 彼女の入場に、聴衆は少しばかり騒がしくなる。新しく異国の女王になったばかりの人を見るのだから、その反応は当然だろう。


—―きっと珍しい物を見るのと一緒よね。彼らにとっては。

 若いとか、女だとか、威厳が無いだとか、頭が悪そうだとか、言う人はいるかもしれない。でも、そんな反応はどうだって良い。

 周りの反応に戸惑ってはいけない。王都に着いてからの短い間で、シャロンはそう思えるようになっていた。


――アズール様、付いていて下さい。

 シャロンは胸に手を当てた。彼女の着ていた純白のドレスは、アズールとの結婚の為に作ったドレスだった。

 伯父には王としての威厳を感じられないからと反対されたが、シャロンはそれでも良いと断ってこのドレスで式に参列した。

 自身の意思表明の為に。



 エル・オークストーの国王と軽く挨拶を交わし、国交再樹立のための誓約を互いに行い、用意された書に署名を行う。式は滞りなく行われた。


「この度は、二国の関係を元に戻すことが出来て嬉しく思うよ」

 式の終わりに、エル・オークストー王はシャロンに握手を求めた。父と同年代ぐらいの国王は、アズールぐらい体格の大きな人物だった。

「はい。両国が今後も栄えることをお祈り申し上げます」

 シャロンが握手に応じると、会場からは調印を祝う拍手が起こった。


 その最中、国王は突然顔を近づけて来た。戸惑う間もなく、彼は小声でこう伝える。

「彼から話は聞いている。一度下賜されたものを手放したくないそうだ」

 彼、とはアズールの事だろう。彼もまた、頼れる人に自身の気持ちを打ち明けたのかと思うと、シャロンは嬉しくなった。


「この会場に来ているよ」

 それを聞いて、シャロンはすぐにも聴衆の方を見た。視線を一往復させて、ようやく礼服姿で拍手をするアズールの姿を見つけた。

――見てくれている……

 そう思った瞬間、シャロンは緊張して身体が震え、唇をかんだ。

 これから行おうとする事に対し、勇気をもらえた。


「彼には、そのお気持ちに添えるよう尽力します、とお伝え願えますか?」

 シャロンは、王と同じような小声で、そう答えた。

 二人のやり取りは、拍手の音に紛れ誰にも分からないだろう。



「この機会に、もう一つ宣誓したい事がございます」

 拍手の音が落ち着いたころ、シャロンは高らかに声を上げた。

 これで終わりと一息ついていただろう式の参列者達は、にわかに騒めいた。彼らに対してシャロンが目線を送ると、その中で一人落ち着いた様子で立っていたイシャーウッドが前に出た。


「この後、私は故郷ウィルカーディンへと戻ります。そこで女王として最低限の務めを果たしましたら、私はすぐにも王位を退きます。王位を弟ルーフリーに譲り、このイシャーウッドを摂政とする事を、ここに宣言いたします」

 イシャーウッドが礼をし、エル・オークストー王も頷いた。すると、聴衆から再び拍手が上がる。

 ウィルカーディン側の参列者達も、遅れて拍手を贈った。伯父を除いて。


◇ ◇ ◇


 調印式の数刻前、シャロンはイシャーウッドの元を訪ね、事前に彼と話を付けていた。


「他に結婚したい人がいるのです。ですから、あなたとの結婚は受け入れられません」

 聖堂の一室の質素な部屋で、シャロンはイシャーウッドを前にし、お辞儀をしてからそう訴えた。イシャーウッドは不機嫌そうな顔のまま、眉間に手を当てる仕草をした。何事か考えている様だった。


「女王になる事は、辞退して頂きますよ」

 イシャーウッドはそう言ってから、シャロンを部屋の椅子に座らせた。

 そこで、シャロンとイシャーウッドを縁付かせる事になった、その経緯について説明してくれた。


 イシャーウッドはウィルカーディン王国の主権者を変える目的で、エル・オークストーによる襲撃を手引きしたそうだ。大国であるエル・オークストーの一部となる事で、ウィルカーディンの土地そのものに利益をもたらす為に。一方的な侵略を受けるより先に手を打った、と彼は語っていた。

 結果、エル・オークストーより爵位を得て、祖国の統治者となる手はずだった。


 そこに伯父が来て、王国の存続を、シャロンを女王に、と訴えた。

 王家の存続はできないと拒否すると、伯父は食い下がってシャロンとの結婚を提案した。

 イシャーウッドは王配として国のかじ取りが出来るならと、渋々了承したのだと言う。


「あなたが私と結婚することは、王家を存続させるための条件です。それでも結婚を断りますか?」

 イシャーウッドの問いに、シャロンは頷いた。

 ウィルカーディンの王家に、未練など微塵もない。

「あなたに、ウィルカーディンの全権を委ねます」


 シャロンの答えを聞き、イシャーウッドは膝を叩いた。

「わかりました。ただ問題は、王家を存続させる方向に決まった事をまた変えるのは面倒だと言う事ですね」

 彼は立ち上がり、トントンと顎を叩いて何か考えながら、シャロンの周りを歩き回る。


「ひとつ、案が浮かびました。あなたには、女王を退く前にいくつか仕事をこなしていただきますが、それでもよろしいですか?」


◇ ◇ ◇


 その仕事の一つが、この『王位を弟に、摂政をイシャーウッドに』と宣誓を行うことだった。


 シャロンの宣誓を聞き、伯父は何事か声を上げようとしていたが、隣にいた参列者に止められていた。

 彼がルーフリーを蹴落とし、シャロンを女王にすることに執念を燃やしていた事は良くわかっていた。それがミレイア憎しで行っている事なのか、自分の影響力を強められると考えている事なのかは分からない。

 でも、ただの子供のルーフリーに罪なんかない。それがシャロンの意思だ。


 何より、伯父は『王家の存続』を大義名分にして、周囲にもそれを訴えていた。伯父の言葉に応えた人も、王位に就くのは王家の人間であれば誰でも構わなかった。

 シャロンが女王でなければ困るのは、伯父ぐらいしかいなかった様だ。




 イシャーウッドに求められた仕事は、他にも残されていた。それが、先代王妃のミレイアの裁判。

 ウィルカーディン王国の建て直しのため、悪政を敷く要因となったミレイアには処刑が望まれたが、女王シャロンはそれを恩赦した。次代の国王の母親なのだからと言って。


 ミレイアが王宮の牢に幽閉される事が決まると、シャロンは退位を宣言した。次の日には彼女は旅立ったと、国民に知らされた。

 数か月の短い在位だった。



***



 冬、精霊山周辺の地域には大雪が降った。

 精霊山に近いこの農園も雪に覆われ、家畜や畑を守りながら厳しい冬を越した。

 春が訪れ、小鳥たちは賑やかにさえずっていた。芽吹いた木々の葉は日に日に青みを増し、強い陽射しを照り返し始める。

 そんな林の様子を、アズールは眺めていた。


 もう、夏も近い。

 約束の泉には水が満たされている。

 それなのに彼女はここにいない。その事にアズールはもどかしさを覚えていた。


◇ ◇ ◇


「彼女は王族としての主権を取り戻したのだから、自分の事は自分で決めるだろうさ」

 調印式の前。エル・オークストー王に何とか取り次いでもらい、私的に会う事が叶った時にこう言われた。彼女、とはシャロンの事だ。


 その時のアズールは気が焦っていた。

 シャロンを王都の聖堂の前で降ろした後、その事をひどく後悔したのだ。

 どうして、そのまま彼女をさらってしまわなかったのだろうと。放したくないと言っておきながら、どうして彼女を手放したのかと。


 王に全てを打ち明け、何とかシャロンを取り戻すことが出来ないかと願い出た時に、全ては彼女が決めると返された。

「信じて待っているのが、賢明な判断ではないかな?」

 様々な思惑や圧力から、シャロンを女王にする事が決まったのは察しが付く。彼女の心ひとつで何でも変えられる訳が無い。それでも信じるしかないのかと、苦々しく思った。


 けれど、王の言葉は正しかった。

「私はすぐにも王位を退きます」

 シャロンが調印式の場でそう宣誓した。事前に聞いていた話と違っただけに、彼女の意思がにじんだ言葉だと直感した。

 調印式に、結婚のお披露目のためのドレスで出てきたことにも驚いたが、彼女が堂々と宣誓した事にも驚かされた。少し前に『離れたくない』と泣いていた、はかなげな女性とは思えなかった。


「お前の気持ちに添えるよう尽力するそうだ。そう伝えろと頼まれてしまったよ」

 調印式の後に王に呼ばれて参じたところ、快活に笑いながらシャロンの言葉を伝えられた。

「良かったじゃないか、愛されているな」


◇ ◇ ◇


 信じて待っていても、辛いだけだった。

 シャロンは、女王の仕事を済ませただろうか。あれから状況が変わったりしていないだろうか。

 異国の事であるせいか、彼女個人の動向について詳しい話は入ってこない。


 アズールがもの思いにふけりながら散策している所は、自宅近くの泉のある林だった。

 シャロンが屋敷にいたころ、彼女はこの林の散歩を日課にしていた。ここに、見たいと言っていた泉がある事を知らずに。


 気づけば、アズールは泉へ続く道に入っていた。

 一緒に見ると約束をしたのに、一人抜け駆けして見るのもためらわれる。だからその場を引き返そうとした。

 けれど、道の先に人影が見え、引き返すのはやめた。

 人影は、彼女は、道の先の丘の上から、泉のある方を見下ろしていた。



 深い青色の泉。旅行記に記されていた通りの色だと、シャロンは思った。

 深いところでは青いけれど、浅いところには多くの苔や草が茂っていて、また違った色合いを見せていた。実際に見てみると、記されていない発見がたくさんあって、シャロンは感銘を受けた。泉のその抜けるような透明感は、きっと言葉では言い表せないだろう。


「シャロン!」

 その懐かしい呼び声を聞き、シャロンはようやく泉から視線を外すことが出来た。振り返れば、ずっと会いたいと思っていた人がそこにいた。

「アズール様!」

 シャロンが呼びかければ、相手は緩やかな丘を駆け上がって来る。待ちきれなくてシャロンも彼の元まで駆け寄った。


 体が触れ合うほど近寄ったと思った瞬間、アズールはシャロンの体を抱き寄せた。

「きゃ!」

 思いがけず急だったので、シャロンは悲鳴を上げてしまった。アズールはそれでもシャロンを放さず、ぎゅっと抱きしめ、彼女の髪を優しくなでる。


「幻かと思った。本当に、本当に、シャロンなんだな?」

「はい……」

 シャロンはアズールの胸に顔をうずめ、その体温を肌で直に感じ取る。彼の背中にそっと手をまわした。


「泉を見ていたのか?」

 アズールが腕の力を弱め、シャロンを見下ろしてから、そう聞いた。

「ごめんなさい、二人で見る約束だったのに、一人で来てしまいました。林にいると聞いて探していたら、先に泉を見つけてしまって……」

「構わない」

 アズールは答えた瞬間に、シャロンを抱え上げた。

「何度だって、一緒に見よう」

 そうして、シャロンはまた泉の場所まで戻された。


 アズールに抱えられ、さっきと視点の高さが違うからだろうか、泉はまた違った雰囲気を見せてくれた。それでも、深いところの青さに変わりは無かった。

「本当、吸い込まれそう」

 ため息交じりに、シャロンはそう口にしていた。


 その惚けた様なシャロンの表情を、アズールは彼女を抱えたまま、愛でる様な目で見つめていた。

 それに気づいたシャロンは、何とも気恥ずかしくなる。

「あの、どうしました?」

 声を掛けても、変わらぬ様子で見つめるアズールの青い瞳から、シャロンも目が離せなくなった。恥ずかしさから動悸が激しくなるのに、目をそらすことも出来ず、優しく微笑むアズールの顔をただただ眺めていた。


「昔、泉の事を話した時も、君はそう言っていたね。見ているだけで吸い込まれそうになるって」

 そう聞かれ、シャロンはきょとんとした。

「あの、そんな事言っていましたっけ?」

 その時ばかりは、アズールは彼女のとぼけた顔から視線をそらした。


「やっぱり、覚えていないか…… 何年も前に、ウィルカーディンに我が国の使節が訪れた時の事だ。エル・オークストーで行ってみたい場所は無いかと聞かれて、君は泉について話してくれた」

「使節…… エル・オークストーの?」

「その時、私は使節団の護衛として、その場に同席していた」


 そこまで聞いて、シャロンはようやくその時の事を思い出した。

 エル・オークストーから訪れた使節。公の場に出される事が少なくなっていたシャロンだったが、その時ばかりは珍しく出席することが出来た。ミレイアによる行動制限がまだ少なかった時期でもあった。

 その時に、泉の話をしていたのを思い出した。


「ごめんなさい、そこにアズール様がいたなんて知りませんでした……」

 当時のシャロンは、ミレイアの目ばかり気にしていて、周りの事が見えていなかった。使節団の顔も名前も覚えていなかったし、護衛がいたことすらうろ覚えだった。


「もう、どうしてもっと早く言ってくれなかったのですか?」

 シャロンは顔を赤くしてアズールに問いかけた。覚えていなかった事に対する、ちょっとした照れ隠しだった。

「私だって気を使ったんだ。一方的に知っているだけの男にそんな事を聞かされて、気味悪く思われるんじゃないかと」


「そんな事……!」

 無い、と言いかける前に、頬にアズールの手が触れた。

 言葉が続けられなくなったのは、それで全身にしびれが走ったから、だけじゃない。彼の熱い眼差しに気づいたからだった。


「あの時からずっと、君の事が気にかかっていた」

 その言葉を聞き、シャロンはハッとした。アズールは初めから、シャロンを知った上で接してくれていたのだと。

 初めは馬鹿みたいに、その優しさを怪しんでいたけど、知ってしまえば何て事はない。

 これでもう気兼ねなく、彼のやさしさに甘える事が出来そうだ。


「アズール様。私、嬉しいです。嬉しくて、嬉しくて……」

 シャロンがアズールの首の後ろに手を掛ける。すると、彼女を抱える彼の手が強ばった。

「シャロン……」

 じっと見つめる彼の目は真剣で、見られているだけで全身が熱くなる。その顔が近づいて来ると、以前の事を思い起こして体が強ばってしまった。


「シャロン、嫌か?」

 あの時は強引にしたのに、今日はなぜか、それをためらっていた。

 シャロンは慌てて首を振り、彼の首に回した手に力を込める。

「アズール様、好き…… だから……」

 恥ずかしい気持ちを堪えながら、ねだった。


 シャロンの気持ちは、アズールに届いた様だ。

 彼は安心した様に笑ってから、あの時と同じキスをした。

 重ねられた唇は、熱く、心地よい。その熱を感じていたくて、シャロンは目を閉じた。




 アズール・グレイアム卿の妻は、裁縫が好きな女性だったと、後の記録には残っている。

 その人となりは、家族の日記や手紙等から推察できた。

 しかし、彼女がどこの生まれであったかまでは、分からなかった。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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