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エレクトリック・ダンス エピソード4

「雷蔵様!! アンジェが来ました!! これからノウハウの掃討作戦に入ります!!」

 マルカが叫ぶと、ノウハウがバラバラと倒れている遥か向こうからアンジェが走って来た。

 手にはM202ロケラン(ロケットランチャー)を三つとM14(アサルトライフル)を携えている。

「ヨハ!! 雷蔵様を病院へ!! 藤元様は怪我人は治せません!!」

 遠いアンジェはそう叫ぶと、不可視高速作業をとった。

 手にしたロケランの一つをマルカに投げたのだ。マルカがキャッチすると、ノウハウの集団目掛けて撃ち放つ。

 ヨハは僕を持ち上げて、青緑荘の隣の駐車場へと猛スピードで走った。

 瞬く間にスカイラインの座席に僕は優しく座らせられる。

「雷蔵様。止血剤と痛み止めです。お飲みください」

 僕が激痛の中、ゆっくりとした動作で薬を水なしで飲み込むと、ヨハはニッコリ笑って車を急発進した。

 僕は痛み止めのために急に眠くなった。

 目を閉じていても河守の笑う顔が浮かんでいた……。

 

 再び目を開けると、云話事・仁田・クリニックの救急外来に着いていた。すぐに集中治療室へとヨハに内臓された体内通信で連絡を受けた救急隊員によって運ばれる。

「大丈夫ですか!! 雷蔵様!!」

 ヨハのまともな声が僕の耳に残った……。

 僕はこれからも、死は怖くはない。でも、河守の笑顔がもう見れなくなるのは何故か……怖かった……。


「お! 起きた!! 起きた!!」

 原田の声だ。

「雷蔵さーん。朝ですよー」

 原田は陽気な声を発している。

 どうやら、僕は一命を取り留めたのだろう。

 ゆっくりと目を開けると、そこには原田と九尾の狐。そして、生き返った河守がいた。白い病室の中だった。

「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」

 九尾の狐が歌っている。

「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」

 河守が歌っている。

「ハッピバースデー。雷蔵さん」

 原田が手に持っていた赤いロウソクがたったケーキを差し出した。

「…………」

 僕の体は少しも動かなかった。

 誕生日なんて、誰にも祝ってもらった時がない。それに、確か僕の誕生日は2月のはずだった。

 あれ?

「そうか……これは……夢か……」


「雷蔵様~~。大丈夫ですか~~」

 ヨハの声が聞こえる。

 僕は夢から覚めた。

 辺りを見回すと、ヨハ以外に誰もいない真っ白い病室だった。外は豪雨と強風が激しく窓を叩いていた。

「酷かったんですよ~~。4日間もお眠りしていて~~左足と左腕と右足~~。そして~、お腹に計6発も撃たれてあったので~~すよ」

「僕は起きているのかな?」

 僕はまだ夢を見ているのだろうか?


 ヨハに確認すると、ヨハは首を傾げて、

「はい、雷蔵様は起きていますよ~~」

「みんなは?」

 すると、ヨハの可愛らしい顔が曇った。

「酷かったです~。みんな死んでしまいました~。ノウハウは~全てアンジェとマルカが破壊しましたが~~、被害が大きかったので~……」

「え?……藤元は?」

 ヨハが俯いた。

「藤元様は今現在行方不明です……」

 僕の頭に再び真っ赤に燃え盛る何かが突き刺さる。

「ヨハ! アンジェとマルカを呼んでくれ!! C区と戦争だーー!!」

 僕はなりふり構わずに叫んでしまっていた。

 この感情は一体何なのかと、僕は考えることもしなかった。

「了解しました!!」

 白の壁にあるテレビでは云話事町TVがやっていた。


「おはようッス!! 云・話・事・町TV―――!!」

 美人のアナウンサーの背景にはボロボロになったA区の青緑荘と周辺が見える。所々煙が立ち上り、ブルーシートが至る所に被さっている。

 周囲の人たちは誰もいなかった。

「今日は悲惨な事件をお知らせします! なんと、A区の左辺部青緑荘で死者80名です!!」


 美人のアナウンサーはピンクのマイクを力強く握る。

「警察の調べで解ったことは、全部のノウハウの頭のプロフィールデータが壊れていることだけッス!! 製造元も解らなくて証拠も無いようです!! まるで35年前の戦争のようです!!」

 美人のアナウンサーが吠えた。

 更に吠え。

「それに、藤元が何故か行方不明!! 藤元!! さっさと戻って来て、みんなを生き返らせろー! 鼻毛――!! マイクで刺すぞー!! 働けー! 高いギャラ払ってんだぞー(嘘)!! 女子更衣室覗いたことみんなに言いふらすぞー!!(本当)」

 美人のアナウンサーは気を落ち着かせると、

「そういえば、生放送でしたね………皆さんは聞かなかったことにしてください……」

 美人のアナウンサーが落ち着いて話し出した。

「やったのは、C区のはずです。うちの藤元がいなくなる直前に言ってたので……」

 美人のアナウンサーはピンクのマイクを握ると、一つ咳払いをした。

「……コホン。それと、これもいなくなる直前の藤元が言ってたんですが……。というかゲロさせたんですが……。あの日本屈指の大金持ちの矢多辺 雷蔵さんが日本史上最も高性能と言われる軍事用アンドロイド三体とC区と交戦中だったようです。私は憤ります……重大なことを今まで話してくれない藤元にマイクを突き刺したいです……」

 藤元がいないので、マイクを刺すようにシャドウをしている美人のアナウンサーは一人で話している。背景には無残になった青緑荘が写っていた。

「矢多辺 雷蔵氏は昔はハイブラウシティ・Bで、日本を窮地に陥れようとした人物ですが、今となっては日本の救世主になるかも知れません。そう藤元が言っていました。何が起きているのかは解りませんが。番組はその雷蔵様を(私だけ)応援しているッス」

 美人のアナウンサーはマイク片手にペコリと頭を下げると、

「きっと、日本のために戦ってくれるはずです……」


 番組はそこで終わった……。


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