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エレクトリック・ダンス エピソード3

「まずは、戦力。当然そっちは雷蔵さんに頼むわ」

「ああ……それは大丈夫だ」

 僕にはアンジェたちがいる。普通のノウハウよりもとても強い特別なアンドロイドだ。

「後は首相の二週間後の一番危険な時間帯ね。暗殺を阻止するためには奈々川首相の行動を熟知していないと……。それには、姉さんと原田さんがいるから大丈夫よね」

「ええ……。それは、問題ないわ」

 九尾の狐はあんドーナツを齧る。

「ああ。その日の行動なら……」

 原田は九尾の狐の端末を見つめた。

「云話事マンハッタンビルからすぐの帝都マンションの道を選挙カーが通るようだね。雷蔵さんと俺の自宅の前だなんて……ハハッ」

 原田の声に、

「え? 僕の家の云話事帝都マンションなのかい?」

 僕は混乱した。

「ええ。あなたの家のすぐそばで選挙戦をするみたい。きっと、他の政治家たちも老人福祉のことを考えているんだわ。確かにA区の反感をかうからかもしれないわね……。何故なら老人が大勢いるのはA区よ」


 九尾の狐の言葉を反芻すると、僕は何か感じた。でも、それが何なのか今の僕には解らなかった……。

「……」

「雷蔵様~~。また、険しい顔です~~」

 ヨハが心配そうな声をだすと、外から突如、一発の銃声が鳴り響いた。

 ベランダへと僕たちが急いで向かうと、下の雪が積もる道路に人が倒れていた。よく見ると僕が三年前の野球の試合で戦った淀川 次郎だった。

 淀川 次郎。30代の痩せている男だ。

「あ、淀川さん。あの人、遠い場所で焼き鳥屋してて、今頃帰るのよ」

 河守が玄関へと走り、階下へと向かう。

「河守様~~!! 危険です~~!!」

「河守様!!」

 ヨハとマルカが同時に玄関へと走り出した。

 僕と原田も向かった。

 底冷えする廊下へ出ると、205の部屋の銃を持った島田と弥生。その隣の部屋の3年前に野球の試合で戦った20代の広瀬が血相変えて出てきた。


 島田はベレッタで、弥生は軽量化されたサブマシンガンだ。広瀬は丸腰だ。

「なんだ!!」

 島田が辺りを警戒して吠えた。

「あ!! 淀川さんが倒れているわ!!」

 外を見た弥生の悲鳴に似た声の後に、島田は寝間着のまま階下へと走る。

「どうしたんですか!?」

 広瀬も階下へと走り出す。

 僕もマカロフを抜いた。

 階下へ行くと、廊下から倒れた淀川が見えるが、その遥かB区の方角から大勢の武装したノウハウが歩いてきた。

 おおよそ数百体はいる。

 不気味なその集団は、手にはサブマシンガンとハンドガンを持っていた。

「なんだー!! 戦争かー!!」

 島田がノウハウの集団に向かってすぐさま発砲する。

 その前方をマルカが体を盾にすると、マシンピストルを構えて撃ちだしていた。

 淀川に向かってしゃがんでいる河守には銃を抜いたヨハが体をバリケードのようにしていた。

 ヨハとマルカが被弾していく。

 相手の大勢いるノウハウにも青い火花を発し壊れたものがでてきた。


 激しい銃撃戦の中、周囲の近所の人々が起き出した。弥生と原田は武器を構え廊下から身を低くして発砲を続ける。広瀬も震えながら廊下から事の成り行きを見守っていた。

 僕は生まれて初めて戦争を体験することになった。

 大量のノウハウは皆、無言で撃って来る。

「河守様!!」

 見ると、河上が淀川の隣で血を流して倒れていた。

 その姿を見た僕は頭の中で、突然、何かがキレた。

「このヤロー!!」

 気が付くと、僕は廊下から叫んでノウハウの集団へと走り出していた。

 マルカとヨハがすぐに、僕の後を追った。

 撃たれた島田が倒れた。僕の頭は目の前のノウハウの集団だけだったが、左足と腹部などに激痛が走る。数え切れないほどの銃弾が飛び交う中。倒れた僕にヨハが覆い被さる。

 悲鳴と銃声が往復する中。

「雷蔵様! 大丈夫です! 河守様なら藤元様の不思議な力で必ず生き返ります! ご安心してください!」

 ヨハが赤子をあやすように僕の頭を撫でていた。

 広瀬も弥生も撃たれていった。

 原田は室内へと駆けだした。


 僕は熱した何かが突き刺され破裂しそうな頭をヨハに傾けていた。

 涙が溢れ、ヨハの腕の中で泣いた。

「マルカ! 近くの警察と救急車に連絡です!」

「了解!!」

 マルカが銃撃戦をしながら、体内の通信を使う。

 僕はヨハに守られ青緑荘の玄関まで運ばれた。

 しばらく、僕は何も考えられなかった。

 ヨハが僕の耳元で言った。

「もうすぐです! 雷蔵様アンジェが重装備してこちらに来ますよ~~」

「河守…………」

 僕は血を流して倒れている河守を見ていた。

 河守の顔が見える。 

 笑ったように見えた。

 かなり離れたところから、大きい爆発音がとどろいきた。


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