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───コンコン
「旦那様がいらしたみたいですね。私はお食事をお持ちしますが、何かありましたらすぐにお呼びください!!」
「え、えぇ。わかったわ。」
アンナがドアを開けると、今日も眉間にシワをよせたハロルドが入ってきた。
「只今、お食事をお持ちします。」
アンナが出ていくと、暫く沈黙が続き、やっとハロルドが口を開いた。
「…おはよう。」
「おはようございます…。」
「………体調はどうだ?」
「はい。おかげさまでこの通り身体も動かせますし、昨日よりもだいぶいいです。」
「………そうか。」
「ご心配おかけしてすみません。」
「大丈夫だ。………いや、大丈夫というのは………その……とても心配した…。」
そう…ハロルド様が心配してくれたのね。…嬉しい……?
昨日なにも言わなかったからわからなかったわ。
それにしても、ハロルド様の隈が昨日よりひどくなってるわ…
…寝られていないの?
もしかして……心配して私のところに毎晩来てるのかしら………?
聞いてもいいのかな…
「あの。昨晩なんですが、私の部屋にいらっしゃいましたか?」
「!!!!!!!」
ハロルドは目が溢れ落ちそうなほど見開き固まってしまった。
─────コンコン
「失礼します。お食事をお持ちしました。」
アンナは食事をテーブルの上に並べ、チラッとハロルドをみる。
「では、どうぞごゆっくり召し上がりください。」
そしてアンナは部屋を出た。
(旦那様まぬけな顔でとまってなかった??)
部屋は、再びシャルロットとハロルドの二人になった。
ハロルドは咳払いをした。
「…君が倒れた時のことなんだが。」
「…………。」
「君が飲んだお茶に毒物が検出された。お茶を淹れたメイドはすぐに拘束したんだが持っていた毒を飲んで自殺してしまった。メイドが単独で君を毒殺しようとしたとは考えにくい。」
「……そうですよね。」
毒殺………確かに一介のメイドがリスクを冒してまで公爵夫人を殺すなんて考えにくいわ。
「必ず、私が犯人をみつける。それまで、不安かと思う。この屋敷の使用人にも他に共犯者がいるかもしれない。…アンナなら、君に心酔しているから信用しても大丈夫だ。なにかあったらアンナを頼ってくれ。…私がいないときに義妹のレイチェルと…特にテオドールとは会わないように。」
…レイ、チェル………
「…わかりました。」
「それから、これを。君が倒れてからみつけて…すまない。悪いとは思ったんだが…少し読んでしまった…。」
ハロルドはそう言って、シャルロットがつけていた日記帳を渡した。