表舞台へ
「まさか、こんなに早く戻ってきてくれるなんて思ってなかったよ。お父さんとかお母さんは?」
「元々、高校入学を期に日本に戻ってもいいってお父さんが約束してくれたから!」
僕は、ユウとの再会に驚きながらもそれ以上に疑問に思うことがあったので、ユウではなく翼さんに聞いてみた。
「つばっさん、なんでうちの会社にユウが加入したの?というかそもそもつばっさんにユウの話をしたこともないと思うんだけど…」
「まあ、私だってこの話はつい最近になって知ったことなんでね。簡単に言えば中国で最近人気急上昇中だったこの子の方からうちに連絡があってね。うちのブランド、DeStarSの宣伝モデルになりたいってね」
「でも、それならなんで僕の方に連絡くれなかったんだよ?」
「この子の方から伝えないでくれって言われていてね」
「そうなの!でもビックリはしたでしょ?リン!」
「まあね?でもすごいタイミングで戻ってきたよね」
僕がそう言ったのには理由がある。僕がアクセサリーブランドを翼さんの協力のもと立ち上げてから、今回出すのがちょうど10作目で、なおかつユウとの思い出である親切な甜麵醬の話をモチーフにしたアクセサリーだったから。それはユウも感じていたようで、
「そもそも、私はリンがあのキーホルダーを作ってたのも知らなかったけど今回のネックレスは見た瞬間にあの時の事を思いだしたヨ」
「そうなんだよ。僕も、ユウとの思い出を絶対に忘れないように永遠に形に残るようにって思ってこの節目にこの商品を作ったんだ」
「でもすごいね、リン」
「なにが?」
「だって中学生の時から世の中にアクセサリーを出してたってことでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「そんな歳でそんなことができる人なんてほぼいないよ!」
「手先は器用なほうだから…」
そんな話をしてユウと楽しんでいると、翼さんがこんなことを言い始めた。
「そうだ、凛君」
「何か他にあるんですか?」
「会社のホームページのデータちょっと変更してるから」
「あー、ユウを専属モデルのところに入れてるっていう話で……ぇ?」
そこに書かれていたのは
『代表取締役 小鳥遊 凛』
という文字といつ撮ったのかもよくわからない僕の顔写真だった。
「な、なんで代表が僕になってんの⁉︎僕、社会人になるまでは裏方でって言ったよね!」
「確かにそうは言ってたしそうするつもりだったんだが、ユウさんがこうして表に出たのなら凛君、君もそろそろ表舞台に出るべきかと思ってね」
「いやいや、僕、許可なんかしてないけどね⁉︎」
「そこについては問題無いよ。今まで通り事務方については私がやっていくから、それに凛君のお母さんからは許可をいただいてるしね」
「本人が許可してない時点でダメだと思うんですけど?」
「ダメ……かな?リン」
「うっ……」
普通に拒否しようと思ったけど、ユウからのお願いに断れるはずもなく
「わかりました。でも基本的にはデザイニング中心でやりますからね?」
「わかっているさ。ああ、それと今日から凛君はユウさんと一緒に生活してもらうから」
「は?」
「はーーーーーー⁉︎」
翼さんから今日一番の爆弾を投下された僕の今日の波乱はまだ始まったばかり。