DeStarS
「おはよー」 「おはようございます」 「おはー」
高校に近づくにつれて他の学生の声が色んなところから聞こえてくるけど、残念ながらこの高校に僕の友達はまだいなかった。
「ねぇねぇ、DeStarSの新作のアクセ見た?」
「見た見た!めっちゃかわいいよね!」
「そうなの!でもちょっとお高めだよねぇ」
「でもあのブランドは人気だもんね」
近くのJKが話している内容に、僕は少し恥ずかしくなりながら学校への道を進んでいく。なんで僕が恥ずかしがるのかはまあご想像におまかせすることにして、そのまましばらく歩いて今日から通う高校、華陽学園に到着した。すると、いきなり女の人に話しかけられた。
「君が小鳥遊君かな?」
「まあ一応そうですけど……どちら様ですか?」
「ああ、名乗らなければわからないよね。私は神宮寺 翼だ」
「神宮寺……って、え?」
「気づいてくれたかな?」
「……いやいや、なんでここにつばっさんがいるんですか!?」
「ははっ、凛君の驚いた表情なんてなかなか見られないからね。良かったよ」
「それはいいんですけど、これから僕入学式あるんですけど何かあるんですか?」
「いや、今日は何かあるわけじゃなくただの付き添いだからね」
「付き添い?……誰のですか?」
「それは会ってからのお楽しみってやつさ。じゃあ私は先に行かせてもらうよ」
そう言うと、つばっさんことDeStarSの表向きの社長である神宮寺翼さんは講堂の方へと消えていった。
(なんなんだろう。誰も来るとは聞いてないけど…)
「以上をもって入学式を終了いたします」
結局、つばっさんが言っていた誰かが出てくることもなく入学式は終わりを告げ、今日の学校は終わった。
「小鳥遊君がつけてるそれってDeStarSの最初のキーホルダーだよね!?すっごく珍しいのに!」
「ま、まあね。運良く買えたから」
「そうなんだー!……そういえばさ、DeStarSが今日の昼過ぎから広告を全国に掲載するっていうのは知ってる?」
「……え?」
「知らなかったんだ!なんでも中国で今大人気のモデルの人が出るらしいよ!」
「中国……!?ありがとう、早乙女さん!」
「え?何が?」
「今度DeStarSの新作あげるから!」
「え!?どういうこと!?」
僕は、クラスで隣になった女の子、早乙女 瑠依さんから教えてもらった情報でようやくさっきのつばっさんの言ってた事がわかったので、僕は先生に事情を説明して、部活動説明会をすっぽかして渋谷へと向かった。
(間に合うか…)
そして、スクランブル交差点の大型モニターにて
「離れ離れになった大切な人へ、この贈り物はいかがですか?
今回の新作は燃えるような紅いネックレス!中国のとある地域の風習を参考に作られた『Sweetie Crimson』。今回のモデルはその風習のある地域からデビューした中国の新星、王 雨桐さんです!」
「みなさん!初めまして。新しくDeStarS専属モデルになりました王 雨桐です!みんな、ユウって呼んでくれると嬉しいです」
映し出された映像に、僕は絶句しつつオフィスへと急いだ。
「っはー、はー、つばっさん!」
「やっと来たのね…凛君」
迎えてくれた翼さんと一緒にいたのは……
「……会いたかったよ!!リン!」
「……おかえり、ユウ」
北京に帰っていたはずのユウだった。そして今日、僕がこれから始まると思っていた平凡な生活は終わりを告げ、非日常的な生活が始まる。