僕の前日譚
題名の親切は「おやきり」と読んでもらえると助かります。この親切と甜麺醤はとある配信者さんの配信から生まれたネタを使わせてもらってます。題名と内容は全然異なる可能性が高いですがそれでもよろしければどうぞ!
「やっばい、遅刻するって!?」
僕は小鳥遊 凛。今日から高校デビューを果たす……っていう大事な日なのに遅刻しかけていた。
「ほら、凛。ちゃんと弁当は持った?」
「持った!……今日もちゃんとあれいれてくれてるんでしょ?」
「ふふっ、もちろん入れてるけど…ホントに好きねぇ?甜麺醤」
他の人に言うと驚かれるし、なんで?と思われるんだけど僕は中学に入った頃のある人との出会いをきっかけに甜麺醤を愛用するようになったんだ。
その人は、中国からの転校生の女の子で、王 雨桐さん。席が隣同士になったので、僕は彼女と仲良くしていた。けれど彼女は1年後に中国へと帰ってしまったんだ。あの時の約束を僕は守り続けている。
「ねぇ、リン」
「なに、ユウ」
「わたし……ね?来月、北京に戻ることになったの」
「そ、そんな……僕、ユウと離れたくないよ!」
「私もリンと離れたくない!だからね?」
「うん」
「これを、私だと思って使って欲しいの!」
「これ……は甜…麺醤?」
「そう、『親切甜麺醤』」
「おやきり…てんめんじゃん?しんせつじゃなくて?」
「あれ?これってオヤキリって読むんじゃないの?」
「ははは、まあそう読むのもわからなくはないけどね?これは親切って書いてしんせつって読むんだよ」
「そうだったんだ…なんだか恥ずかしいネ」
「まあ、そういう事もあるよ。でもなんで甜麺醤なの?」
「私の住んでる町では、家族とか大切な人にこの甜麺醤をあげるっていう風習があるの」
「そうなんだ。……ってことは」
「そういう事だヨ!でも、私は必ずまたリンのところに帰ってくるから答えはその時に教えてほしいネ」
「ユウ……わかった!……じゃあユウ、ちょっと待ってて」
「なにかあるの?」
「……お待たせ、僕だけもらうのもなんだかあれだし僕はこれをあげる!」
「これ……星のキーホルダー?……でも真ん中で割れてる」
「うん。これはね?運命の星っていうシリーズのキーホルダーで、2つに分かれるうちの片方を自分、もう片方を大切な人に送ったらいつかまた会えたときの目印としても使えるようになってるんだ。だから、この世に僕のこのキーホルダーと合うのはユウにあげたそのキーホルダーだけ。これなら次にもし会えたときにすぐに僕だってわかるでしょ?」
「……ふふっ、リンって結構ロマンチックな考え方をしてるんだネ」
「そ、そうかな……もしかして迷惑だった?」
「ううん。そんなわけない、とってもうれしいヨ!」
そして、ユウとはこの時を最後に別れた。ユウはとっても綺麗な人だったからもう僕の事なんて忘れて、僕よりももっといい人と巡り合ってるかもしれない。だけど、もしそうだったとしてももう一度ユウと会うまではこの約束だけは守り続けると決めてるんだ。
「じゃあ、行ってきまーす!」
「私も後で行くからね!」
僕の新たな日常がここから始まる…………はずだった。
僕の日常がすぐに変わってしまうことをまだこの時は知る由もなかった。