双子の王子
自分に話しかけられていることにようやく気付いたようで、マニスは仮面から顔をあげると「うんっ」と子供のような無邪気さで答えた。「ねぇ、これ、くれるの?」と仮面を示している。
「はい。さようで」
「マニス様。道中、あまりお喋りになりませぬよう・・・」
サラヤが言うと、マニスはほほを膨らませた。
変声しきっていない声だった。
「何だようっ、新しい友達が来るって言ってたじゃないかっ。何で仲良くするのがいけないのっ」
「マニス、サラヤは親しき仲にも礼儀あり、と言ってるんだよ。そうだよね、サラヤ?」
穏やかな声でなだめたのは、兄の方だ。
同じ顔をしていると言うのに、この短時間でずいぶんと表情の違う双子だな、とアトシは思った。周りの護衛隊も多少の困惑が見える。アトシ自身、当惑していた。
「王子が双子だとは聞いていたが・・・継承資格があるのはギリス様だけなのかい?」
言葉を発したのはヨハンだった。サラヤは頷く。
「他言はしませぬように」
「もちろんです。大事なイトコだ。これからよろしく」
「よろしく」
ギニスが微笑むと、ヨハンは不敵な笑いを返した。
サラヤが事務的な声で言う。
「では、参りましょう」
「ええ」