虹の御子
死んだ筈の王子の参加表明に、王族や愛妾の子供達は動揺した。王子が生まれ死んだ日に、大洪水を起こした長雨が止み、城を覆うように大きな虹がかかったとゆう・・・クノメノ国で〝虹〟は特殊な日の証。この日に生まれる子供は〝天災″か〝天才″のどちらかであると言われている。
それで王子は今まで隠されてきたのだろう。
それが今になって出てきたとゆうことは、王子は〝天才″の方だったのか・・・王位継承を巡って小競り合いをしていた愛妾の子供達は、この王子に一番の脅威を感じたに違いない。
「審査を公平に行う為、各地の故郷から世話役を二人、王都からの監視人兼護衛隊を配属のもと、年明けの十五日後にいっせいに出発。より大きく美しい『王の証』を持って来た者に王権を渡す。期限は半年。不正を行ったものは、その場で試験資格を剥奪する」
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そうして派遣されてきた護衛隊の面々は、同じ服を着た同じ背丈の、同じ顔をした少年に目を見張った。サラヤ=スルガの美しさはどこまでも〝男〟であるが、鏡うつしのように同じ顔の二人は、どこか中世的な美を持っていた。成長途中のあどけなさが残る反面、王室育ちにはありえない野性味と、王室育ち並の品格が見える。
「あなたがたが護衛をして下さる方達ですね。わたしの名はギリス。隣にいるのは弟のマニスです。どうか道中、よろしく」
訓練された、王室特有の表情だった。その隣で仮面を弄んでいるのが弟のマニスのようだ。同じ顔をしているが、参加者に渡される白地に赤模様の仮面に夢中のようで、護衛隊を見ようともしない。
「わたくしはギリス様の護衛につきます。マニス様の護衛隊役は」
美剣士が言うとアトシの上司が返事をした。
「護衛隊隊長を任ぜられました、マルーン=キヨバと申します」