風
頭をさげているヨハンの顔がゆがんだ。
涙でくしゃくしゃになった顔を、ヨハンは、さらに、さらに下げて、手を強く合わせた。
つむじ風が落ち着き、卓に現れた赤い石は、なぜかふたつだった。
一つづつでも、ギリスとマニスのどちらかが、王になるのは明白な大きさだった。
マニスは言った。
「選びなさい、って。これからの道を」
ギリスが涙を流した。
「ガロリアに、戻りたい・・・わたしは、王の器ではない。思慮からの言葉ではない」
ギリスはアトシを見た。
「お腹に、宿った・・・」
アトシはギリスを強く抱きしめた。
「あなたとなら、どこへでもっ。お腹の子も、共に育てましょうっ」
◇戴冠式 会場◇
赤いベルベットの絨毯が、厚みのあるマントにこすれている。
側にはサラヤ。
登城した頃には、王ハクホは崩御していた。
――・・・そして戴冠式。
その会場に、僧としてヨハナの息子、ヨハンがいた。
もの悲しげな、どこかかげりのある微笑で、ふたりに頭をさげた。
ヨハンは樹海から帰ったあと、自分から僧になる道を選んだときく。
王冠帽子をさずかり、そして女王は言った。
「沢山の者が死んだ・・・どうか、この場にいる全員で、鐘が鳴るまで追悼を・・・」




