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乙女
「ち、ちかん・・・?」
アトシは自分が下敷きにしてしまった人物の胸をもむように掴んでいることに気づいた。
「え・・・」
驚きのあまり、動けないでいるマニス。
「あ・・・ああっ、申し訳ありませんっ。マニス様はっ・・・」
ひざますいて、無礼を詫びようとするアトシ。
それを冷たい目で見ているギリスをなだめるかのように、ジャスミンの香りが吹いた。
「おもてをあげよ・・・」
アトシは顔を上げる。
「どうか、無礼をお許しください」
「とんでもない秘密を知ったな・・・」
「まさか、あの・・・女性だったとは・・・」
サラヤが言う。
「ギリス様、いかがいたしましょう」
数秒の間があって、ギリスは杖をサラヤに投げて渡した。
湯あみをはじめる。
「びっくりしたぁ~」
「マニス」
「なぁに?」
「お前が女だって、バレた」
「やっぱり?」
「申し訳ありません」
とアトシが言うと、ギリスが返す。
「まさか、乙女の胸をもんでおいてただで済むとは思ってはおるまいな?」




