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9話 皆でスイーツ店

 午後のHRが終わった放課後、生徒達は皆、教室から出ていく。

俺と聡も遅れないように1階の下駄箱へ急ぐ。


 1階の下駄箱に到着した時には、既に愛理、汐音、凛の三人は靴を履き替えて待っていた。

急いで靴を履き替えて三人の元へ駆け寄る。



「ごめんね、これでも急いだんだけど」


「大丈夫、私達も今靴を履き替えたばかりだから。合格。合格」



 愛理が優しく微笑んで、俺達に声をかけてくれた。


 汐音と凛が揃って校舎を出る。その後を愛理の隣を歩いて、俺達二人が追いかける。その後ろに聡が続く。



「ちょっと待ってくれ。俺だけ一人なんて寂しいじゃないか。俺も仲間に混ぜてくれよ」



 汐音が聡の言葉を聞いて振り返る。



「それじゃあ、私達二人の相手をしなさいよ。愛理と亮太のお邪魔をしても悪いし」


「おう……ありがとうな」



 聡は走って汐音と凛の元へ駆け寄る。

汐音と凛はそんな聡を見て笑っている。



「聡って地味集団の中ではイケメンなほうだよね。今まで彼女と付き合ったことあんの?」



 凛が聡に質問をぶつける。



「高校1年生の時は彼女はいたよ。ささいな喧嘩で別れちゃったけどさ。それからずっと彼女ができなくて……俺のこと興味あったりする?」


「冗談でしょ。私も凛も男子には困っていないわ。わざわざ地味男に手を出す趣味はないの」


「……そうですか」



 聡は凛にバッサリと斬られた。

肩を落として、落ち込む聡。



「それでも聡はイケメンだから、また彼女ができるんじゃん。待っていてもできないと思うけど」



 汐音が聡のフォローに回る。

すると聡は目を輝かせて、汐音を見る。



「そうだよな……諦めなければ必ずチャンスはくるよな」


「私と凛のことは下の名前で呼んでいいわ。聡は亮太の親友だし、特別に許してあげる」


「やったー! できたらLINEの交換もお願いしたいんだけど、ダメかな?」


「聡って、地味男の割りにはグイグイくるわね。まだLINEを交換するつもりはないからダメよ」



 まだ汐音と凛と聡はあまり話したことがない。

女子としては警戒するのが当たり前だと思う。

俺でさえ、まだ愛理とLINEの交換をしていないのに……聡は勇気があるな。

これぐらいグイグイいかないと彼女をゲットすることができないのか。

積極性が大事なんだな。



「亮太……あまり聡の行動は参考にならないと思う。グイグイこられて嫌がる女子もいるから。私なんてグイグイ迫られるの苦手だもん」



 俺が聡を観察しているのを見て、愛理が隣から耳元にささやいてきた。

そうか、愛理はグイグイと迫られるのが苦手なんだ……覚えておこう。


 駅前のスイーツ店に入ると、店内は女子高生で埋め尽くされていた。

やはり女子はスイーツが好きなんだな。


 6人掛けのテーブルに案内されて、皆で席に座る。

席順は汐音、凛、愛理が対面で、聡が隣だ。



「今日は席が取れただけでもラッキーね。いつもだったら30分近く待たないといけないのに。学校を早くでてきて正解だったわ」



 汐音が状況を教えてくれた。今日は席に座れてラッキーらしい。


 店員のウエイトレスが注文を取りにくる。

愛理は嬉しそうにウェイトレスに注文する。



「私はイチゴのミルフィーユとアイスカフェラテ」



 すると汐音が次に注文をする。



「私はイチゴのタルトとアイスカプチーノ」



 そして凛がどれにしようか悩んでいる。



「私はアップルパイとアイスカフェラテで」



 俺は無難にイチゴのショートケーキと飲み物を頼んだ。聡もチーズケーキと飲み物を頼んでいる。


 ウェイターが注文を持ってきて、テーブルの上にケーキと飲み物を置いて行く。

ケーキがキラキラして、とても美味しそうだ。


 愛理がイチゴのミルフィーユを一口食べて、頬を蕩けさせている。



「やっぱり、ここのケーキ、美味しい!」



 汐音と凛もケーキの美味しさに声をあげる。



「美味しい! 超美味しい!」



 やはり女子にとって甘いモノは好物のようだ。

この店を忘れないように覚えておこう。

いつか愛理とデートをした時に一緒に来てみよう。


 俺もイチゴのショートケーキを一口食べる。

口の中に甘さが広がり、それでいてサッパリしていて美味しい。

この店のケーキを狙って女子達が集まってくる理由がわかった。

愛理がケーキを食べるのを途中で止めて、俺に話しかける。



「このケーキ、全て手作りなんだよ。それでこの美味しさ。駅前に来るといつも寄って帰るの」


「そんなに通っているんだ。たしかにケーキが美味しいね」


「そんなにというか週に1回ぐらいだけどね。私達もそんなにお金持ちじゃないし」



 確かに俺達高校生の小遣いなんて決っているから贅沢はできない。

あれ? 愛理はアパートで独り暮らしをしているから、少しは融通が利くんじゃないのか。

このことは愛理との内緒だし、聡は知らないから愛理に聞かないでおこう。


 汐音がイチゴのタルトを食べ終わって、静かにアイスカプチーノを飲んでいる。



「女の子って流行りの敏感でないとダメなの。だからいつも流行っているお店を見つけては食べに行くの。流行りはすぐに変わるから、常にアンテナを張ってないとダメなんだから」



 凛が汐音の言葉に相槌を打つ。



「だから流行りのお店は十件は知ってるわね。流行りが変わったら、流行りの店に移り替わるのよ」



 だから女子って、流行りのお店をよく知ってるんだ。

男子なんて、いきつけの店にしか行かないからな。

そこも男子と女子の違いだな。



「安心して亮太。流行りのお店は私達が見つけてくるから。亮太は一緒に来てくれるだけでいいからね」



 愛理が俺に気を遣って、優しい言葉をかけてくれる。

それがとても嬉しい。



「今度、この店に来る時があったら、また俺を誘ってよ」



 聡が汐音と凛に頼んでいる。汐音と凛は顔を見合せて、悩んでいた。

そして汐音が聡に話しかける。



「声かけられてる男子の要望をきいていたら、あっという間に時間がなくなっちゃうわ。だから聡は早く彼女を作りなさい」


「やっぱり、そうなるんだよなー!」



 聡はそう言ってテーブルに突っ伏した。

それを見て、俺達は声を立てないようにして微笑んだ。

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