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6話 お弁当へのお誘い

 休憩時間になるとクラスの生徒達は思い思いに仲間に分かれて雑談に余念がない。

愛理も女子の輪の中に入って、楽しそうにケラケラと笑いながら話している。

俺の隣には聡が座っている。


 チラチラと愛理は女子達と話をしながら、時々こちらを見ているような気がする。



「ほら、加茂井さんが亮太のことを気にしてチラチラ見てるじゃん。手ぐらい振ってやれよ」



 隣に座っている聡が俺に忠告してくる。



「そんなことをすれば、せっかく楽しく話をしている愛理の邪魔になるんじゃないのか?」


「だから付き合ったことのない男子は困るんだよな。女子ってのは常に好きな男子に見ていてほしいもんなんだよ」



 好きな男子……俺が愛理の好きな男子。

付き合い始めてから一度もそんなことを考えたこともなかった。



「いいから、手を振ってやれよ。絶対に喜ぶはずだからさ」


「そうなのか……」



 チラッと愛理が俺を見た。

俺は控えめに愛理に向かって手を振る。

すると愛理は笑顔で俺に手を振り返す。



「ほらな……喜んだだろう。女子は見られたい生き物なんだよ」


「男子とは違うんだな」


「当たり前だろう。女子は感情で生きている生き物だぞ。男子とは全く違うと覚えておけ」


「わかった……ありがとう」



 それからも愛理は女子達と会話しながらも、チラチラと俺の方へ視線を向ける。

その度に俺は手を振って、愛理を見ていることを伝える。


 すると愛理が席を立って、まっすぐに俺の元へ歩いてきた。



「さっきから手ばかり振って、どうして私の近くへ来てくれないの? 私、期待して待ってたじゃん」



 え……俺が手を振ったことで、愛理に期待させてしまったのか。

俺は思わず聡のほうへ顔を向ける。

聡は俺と目を合せないようにして、明後日の方向を向いて座っていた。



「せっかく付き合ったんだから、近くに来てくれてもいいと思うけどー」


「だって、愛理は女子達と仲良く話していたし、俺だけ女子達の輪の中へ入っていく勇気なんてないよ」


「亮太なら、そう言うと思って私から来たんじゃん。隣に座ってるの亮太の親友でしょ。私に紹介してくれてもいいかな?」


「ああ……一応、中学からの腐れ縁で親友の聡」


「聡といいます。よろしくお願いします加茂井さん」


「亮太の親友なら、私のこと愛理って呼んで。よろしくね聡」



 聡は間近で愛理と話すことができて、とても嬉しそうに顔をニヤニヤさせている。

そんな嬉しそうな顔をしても、愛理は俺の彼女なんだからな。

自分の中に少し嫉妬心があることに気づいて、俺は自分にこんな心があったのかと驚く。



「亮太に見られているのは嬉しいけど、それだけだと女の子はダメなの。亮太の傍に行きたいじゃん。亮太が呼んでくれないと困っちゃうじゃん」


「いや……聡が手を振れっていうからさ。それだけでいいんだと思ってたよ」


「女の子はいつも好きな男子の傍にいたいんだよ。だから私は亮太の傍にいたいの」



 その言葉を聞いて、心臓が止まるかと思うほど跳ね上がった。

愛理が俺の傍にいたいということは、俺のことが好きということで……

そのことを聞いたのは初めてで……

俺は軽いパニックに陥った。


「亮太は今まで女子と付き合ったことがないんだよ。だから女子に免疫がないんだ。俺からもアドバイスしておくから許してやってよ」


「聡、勘違いしてるよ。私、怒ってないし、だって亮太の傍に座ることができたんだから、私はそれだけで満足」



 そう言って愛理は俺の目の前の席に座って脚を組む。

脚を組むとスカートが短いので、スカートの奥が見えそうでハラハラする。

聡は愛理が脚を組み替える度にデレっとした顔で、愛理を眺めている。

やめろ! 愛理をそんな目でみるな!



「亮太は私が近くに来て嬉しい?」


「……嬉しいです」



 こんなに可愛くてきれいな愛理が近くに来てくれて、嬉しくない男子なんていないだろう。

俺だって男子だし……きれいで可愛い女子は大歓迎だ。

それが愛理という彼女となると尚更に嬉しい。



「ヤッタね。私も亮太の近くに来られて、とっても嬉しい。これからは亮太が呼んでね」



 まだクラスの女子達とはほとんど話したことがない。

だから女子達の輪の中へ入っていく勇気はない。

これからは愛理がチラチラと俺を見ている時は、手を振って一度こっちまで来てもらおう。



「休憩時間って時間が短いよね。もっと沢山、休憩時間があったらいいのに」


「そうだね。もう少し休憩時間って長くてもいいと俺も思う」


「昼休憩は私のために時間を空けておいてね」


「昼休憩って俺、学食へ行かないとダメなんだけど……」


「その心配なら大丈夫。私がお弁当を作ってきたから、心配する必要ないよ」



 いきなり愛理の口から手作りお弁当宣言が飛び出した。

俺のために朝早くに起きて、お弁当を手作りしてきてくれたらしい。

こんな幸運に恵まれていいのだろうか。


 聡が羨ましそうに、愛理と俺の会話を聞いている。

聡……そんな羨ましそうな目で見ても、愛理のお弁当は誰にも渡さないからな。



「それじゃあ、私、皆の所へ戻るね。お弁当楽しみにしていてね。一所懸命作ったんだから」



 はい、期待して昼休憩を待っています。

あー早く昼休憩が来ないかな。

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