44話 文化祭の催しもの
次の日、予備校巡りで体験した経験を汐音と凛に話をする。
すると汐音が声をあげて笑っている。
「確かに予備校の勧誘も、所によっては強引だもんね」
「そうなんだ。だから予定よりも予備校のパンフレット、集まらなかったよ」
「私と凛の通っている予備校もお勧めよ。勉強は真剣にしないといけないけど、設備は整っているし、講師の先生達が面白いわ」
「なるほど、そういう所も重要になってくるのか。汐音や凛の通っている予備校も、一応候補の中に入れてあるよ」
凛が嬉しそうに小さく手を叩く。
「愛理達も予備校に来てもらえると、予備校ももっと楽しくなるじゃん。私達の所に来なよ」
「わかった。真剣に考えておくよ」
朝のHRのチャイムが鳴る。皆、それぞれに自分の席へと戻っていった。
担任の先生が入ってきて演壇に立つ。
「中間考査テストも終わって、次の行事は文化祭だ。今から文化祭の催しものを決めてもらう。藤本委員長、司会進行を頼む」
藤本委員長が前に進み出て来て演壇に立つ。
担任の先生は窓際に立って、生徒達を眺めている。
「それではこれより文化祭の催し物を決めたいと思います。提案のある人は挙手してください」
男子生徒の一人が挙手をする。
「俺はメイド喫茶がいいと思います」
このクラスの女子のランクが高い。メイド喫茶をすれば映えるだろう。
女子達が良ければ、メイド喫茶でもいいと思う。
女子生徒の一人が挙手をした。
「それって男子生徒がメイドを見たいだけでしょ。私達女子に何のメリットもないので却下したいです」
確かに女子生徒の言い分は通っている。
女子はメイドになっても何のメリットもない。
男子生徒の一人が挙手をする。
「それじゃあ、男子は執事役をすればいいんじゃないか。執事とメイド喫茶。これでいいだろう」
女子生徒の一人が挙手をした。
「男子が執事の服装になっても、私達は嬉しくありません。メイド服を着るのも嫌です」
男子生徒の一人が挙手をする。
「それじゃあ、コスプレ喫茶はどうだ。皆、自由にコスプレしてきたらいいじゃん」
女子生徒が挙手をした。
「それだと何を着てくるか、わからない人達が続出します。混乱を招くだけです。却下です」
こうしてメイド喫茶、執事とメイド喫茶、コスプレ喫茶は却下された。
男子生徒が挙手をする。
「やきそば、お好み焼きの出店なんてどうだ? 担当は交代制にすればいいし」
そこで藤本委員長が口を開く。
「文化祭の伝統的には、出店類は運動部がすることになっていますから。却下ですね」
それでは一体、何をすればいいんだ。
体育館で演劇や歌を歌うなんて嫌だし。
いったい何をすれば皆が納得するのだろう。
担任の先生がそこで口を開く。
「このまま良い提案がなければ、岡島高校の歴史の展示でもいいぞ。お前達に岡島高校の歴史を知ってもらう良い機会だからな」
そんなのは絶対に嫌だ。
クラスの生徒全員が首を横に振る。
男子の一人が挙手をする。
「メイドやコスプレに固執する必要はないんじゃないか。普通に私服喫茶でどうだろう。男子も女子も普段学校の着て来ない私服で喫茶店をする。それだけでも新鮮でいいだろう」
男子達も女子達も悩んでいるが、反対意見は出てこない。
自分達が普段外出する時に着る服装でいいのだから、洋服代もかからない。
女子の一人が挙手をした。
「私服喫茶で異論はないけど、それだけだと物足りないわ。占い喫茶なんてどう?」
「占いなんて誰で知っている訳じゃないし、タロット占いなんかも難しいんだろう」
男子達から野次が飛んできた。
男子の一人が挙手をする。
「私服喫茶でいいじゃないか。どうせ儲けようなんて考えていないんだから。あまり凝ると難しくなるし、俺達生徒に、他の生徒が占いをしておうと思っていないと思う」
確かにその通りだ。
俺に悩みがあったとしても他の生徒達に占ってもらおうなんて思わない。
藤本委員長が口を開く。
「それでは私服喫茶に決定ですね。ネーミングは私服喫茶でいいですか?」
確かに私服喫茶ではインパクトに欠ける。
男子生徒の一人が挙手をする。
「普段着喫茶でいいんじゃないの? 皆、外出する時の普段着でいいわけだし。家にいる時の普段着は却下な」
確かにジャージの上下で文化祭に出る男子が出てきそうだ。
俺は聡の顔を思い浮かべた。
藤本委員長が話をまとめる。
「自分達が一番良いと思う、外出着で文化祭には来てください。家で普段着ている服装は却下とします。水着なども却下ですから、よろしくお願いします。全員エプロン着用です」
男子も女子もエプロン着用、これは面白いかもしれない。
担任の先生が小さく手を叩く。
「これで、このクラスの催しものが決まったな。藤本、報告書にまとめて、俺の机の上に置いておいてくれ。これで文化祭の催し物は決定だ」
女子の一人が挙手をする。
「先生、文化祭の日は、外出用のメイクをバッチリしてもいいんですよね?」
「許可する。普段、外出している時にメイクを使用しているのなら、それも許可する」
その言葉を聞いて男子達が盛り上がる。
俺も愛理がいつものナチュラルメイクではなく、バッチリとメイクした姿を見てみたい。
「後の時間は自習とする。以上だ」
担任はそれだけ言い残して教室から去っていった。
俺は何を着ればいいんだろう。
後で愛理と相談して決めよう。
これで愛理のきれいで美しい姿を見ることができると、俺はほくそ笑んだ。




