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42話 聡からの頼みごと

 体育祭が終わり、中間考査テスト範囲の発表が行われた。

クラスの生徒全員から陰鬱な雰囲気があふれ出してくる。


 今日からテスト範囲を集中して勉強しなければならない。

俺は愛理の家で二人で勉強しようかなと気軽な気持ちで考えていると、俺の隣の席に聡が座ってきた。



「なぜか亮太から、いつもよりも余裕を感じるんだけど」


「夏休みのうちに愛理と予習していたから、いつもよりも勉強が捗ると思うし」



 すると聡が急に俺の胸倉をつかんで体全体を揺らす。



「お前達だけ抜け駆けするなんてズルいぞ。俺だけ勉強、ヤバいじゃないか」


「俺達は夏休みも勉強していただけだ。聡を置いていこうとした訳じゃない」


「それだったら、俺の勉強を手伝ってくれよ。今度から俺も予習と復習をきちんとするから」



 聡は涙目になって俺に訴えてくる。

俺にどうしろと言うんだ。



「俺も一緒に勉強させてくれ。そして俺に勉強を教えてくれ。頼むよ」



 そう言われても困る。

今、俺が勉強している場所は愛理の家だから、聡を愛理の家に入れることはできないし。


 愛理も含めて、汐音と凛にも相談してみようか。


 俺は女子の輪の中で楽しそうにお喋りしている愛理を見る。

愛理とすぐに目が合った。

俺は愛理に手を振ると、愛理が女子の輪の中から出て、俺に向かって歩いて来る。



「どうしたの? 聡の元気ないけど?」


「聡がさ、俺達と一緒に勉強したいって言ってるんだよ。自分だけ赤点ギリギリは嫌だって」


「私の家で一緒に勉強するわけにもいかないし、私達も勉強しなきゃダメだし」


「そんなこと言わずに、俺に勉強を教えてくれよ」



 愛理も聡を見て困った顔をしている。

そして愛理は女子達の輪の中にいる汐音と凛を呼ぶ。



「私達に何か用?」



 汐音が不思議そうな顔で見てくる。

愛理が言いにくそうにチラチラを俺の顔を見てくる。

ここは俺が説明するしかなさそうだ。



「聡が一緒に勉強したいって言ってるんだ。俺達も自分達だけの勉強だけで精一杯でさ」


「それで私達に聡の勉強に付き合えって言うの?」


「もちろん俺達も一緒に勉強するよ。汐音と凛なら成績もいいし、頼めないか?」



 凛が胸の下で腕を組んで真剣に聡の様子を見ている。

聡は汐音と凛に向かって手を合わせて、お願いのポーズをしていた。



「仕方ないわね。また一緒にファミレスで勉強会でも開こうよ。このまま放っておけないし」



 聡がキラキラして目で凜を見る。

凛が助け舟を出してくれると思わなかったのだろう。

俺も断られると思っていた。



「その代り、これからは予習も復習も自宅できちんと勉強をすること。今回だけだからね」



 凜は強く言い放つ。

聡は姿勢をただして、激しく首を上下に振る。



「わかったよ。凛の言う通りだと思う。今回は俺のためにすまない。皆、協力してくれてありがとう」



 汐音が真剣な顔で聡に歩みよる。



「一番、進学塾や予備校に通わないといけないのは聡じゃん。聡も進学塾か、予備校を探しなさいよ。聡も大学に進学したいんでしょ。四年間キャンパスライフしたいんでしょ」


「大学には進学したい。まだ余裕があると思ってた。俺の間違いだった。今度、両親にも話をして、進学塾か、予備校に行かせてもらえるか相談してみるよ」


「それだったら、今回は私もファミレスの勉強会で、聡の勉強を見てあげる」


「汐音、ありがとう」



 汐音が聡を見て優しく微笑む。

凛も聡をみて、ニッコリと微笑んでいる。


 汐音と凛は色々と文句は言うが、いつも俺達に協力してくれる。

本当は優しい女の子なんだと俺は思う。


 俺と愛理には、人に教えるだけの学力がない。

自分達の勉強だけで精いっぱいだ。

なるべく汐音と凛の負担にならないように、自分達で頑張ろう。



「それじゃあ、今日から、ファミレスでの勉強会ね。皆で勉強できるなんて、なんだか嬉しい」



 愛理は嬉しそうに俺を見つめる。

俺は笑顔で頷いた。



「いつもの通り、放課後になったら一階の下駄箱の所で合流しよう」



 汐音と凛が微笑んでゆっくりと頷く

愛理は嬉しそうに小さく手を叩く。

聡は嬉しそうにしている。



「汐音と凛のドリンクバーの代金は俺が奢るよ。ありがとう」


「それぐらい当然でしょ。私達が聡の勉強を見てあげるんだから」



 そう言って汐音と凛は女子達の輪の中へ戻っていった。



「それじゃあ、愛理、汐音、凛の三人は放課後になったら、一階の下駄箱で合流な」


「わかったわ。二人にはそう伝えておく」


「良かったな、聡。また汐音と凛に教えてもらうことができて」


「本当に助かった。亮太と愛理もありがとうな」



 そう言って聡は自分の席へと戻っていった。

そんな聡を見て、俺と愛理はニッコリと笑んだ。

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